第85話 二人の間にあったこと
文字数 701文字
まだ荒い呼吸を繰り返しながら、有希は尋ねた。
「ねぇ……。行彦と、同じだったでしょう?」
伸がこちらを向き、有希の、汗で額に張りついた髪をかき上げながら言った。
「俺はいつも、ユウと行彦を比べていた?」
「そんなことは、ないけど……」
有希は、虚空を見つめたまま言う。
「僕が勝手に気にしてるだけ。もしも行彦としての記憶があったなら、こんな気持ちにはならないのかもしれない。
でも、僕は行彦の生まれ変わりなんだから、気にするのはおかしいってわかっているよ」
自分に嫉妬するなんて、本当におかしいと思う。
「そのことについては、伸くんとも話したんだ。僕も納得しているから大丈夫」
こんな話をしても、伸を悩ませるだけだと思い、有希は話題を変えた。
「ねぇ。これ見て」
そう言って、首元のチェーンを示す。
「これ、伸くんがプレゼントしてくれたんだよ。僕の宝物」
「そう」
伸が、そっと指でチェーンに触れる。
「すごく似合ってるって言ってくれた。今もそう思う?」
「もちろん」
伸が微笑んでくれたので、うれしくなって、裸の胸にしがみついた。優しく抱き寄せられ、再び体が熱くなる。
有希は、それから数日に渡り、二人の間にあったことを伸に話して聞かせた。記憶がないのに、伸のことが好きになって猛烈にアタックしたことも、生野のことで、伸が嫉妬したのを知ってうれしかったことも、潤子にカミングアウトしたときのことも。
話の途中で、こらえきれずに泣いてしまったり、妖しい気分になって伸に迫ったりして、それはしばしば中断したが、伸はいつも、真剣に耳を傾けてくれた。すべてを知ってもらいたいと思い、どんな些細なことも、思い出す限り話した。
「ねぇ……。行彦と、同じだったでしょう?」
伸がこちらを向き、有希の、汗で額に張りついた髪をかき上げながら言った。
「俺はいつも、ユウと行彦を比べていた?」
「そんなことは、ないけど……」
有希は、虚空を見つめたまま言う。
「僕が勝手に気にしてるだけ。もしも行彦としての記憶があったなら、こんな気持ちにはならないのかもしれない。
でも、僕は行彦の生まれ変わりなんだから、気にするのはおかしいってわかっているよ」
自分に嫉妬するなんて、本当におかしいと思う。
「そのことについては、伸くんとも話したんだ。僕も納得しているから大丈夫」
こんな話をしても、伸を悩ませるだけだと思い、有希は話題を変えた。
「ねぇ。これ見て」
そう言って、首元のチェーンを示す。
「これ、伸くんがプレゼントしてくれたんだよ。僕の宝物」
「そう」
伸が、そっと指でチェーンに触れる。
「すごく似合ってるって言ってくれた。今もそう思う?」
「もちろん」
伸が微笑んでくれたので、うれしくなって、裸の胸にしがみついた。優しく抱き寄せられ、再び体が熱くなる。
有希は、それから数日に渡り、二人の間にあったことを伸に話して聞かせた。記憶がないのに、伸のことが好きになって猛烈にアタックしたことも、生野のことで、伸が嫉妬したのを知ってうれしかったことも、潤子にカミングアウトしたときのことも。
話の途中で、こらえきれずに泣いてしまったり、妖しい気分になって伸に迫ったりして、それはしばしば中断したが、伸はいつも、真剣に耳を傾けてくれた。すべてを知ってもらいたいと思い、どんな些細なことも、思い出す限り話した。