第29話 パリへ(1)

文字数 551文字

 関西国際空港を正午に機はフライトした。
ハバロフスク、シベリアの上空を経て12時間後、パリの
ゴール国際空港に着いた。

 運良く窓辺の席だったので、眼下に果てしなく広がる白銀の
連山を飽きもせず眺めていた。飛行情報のパンフレットを手に
したものの、どこの上空か見極めることは困難だった。

 バトル海が近づくと、雪山にいくつもの湖が現れた。湖も川も、
道らしいものも凍っているのだろう白く光っている。
 右後方に長い間浮かんでいたまん丸い月が見えなくなった。
機の航路が西寄りになったためだろうか。

 西へ、西へと太陽を追い続けた空の旅。
天動説か地動説かわからないけど、私は、太陽が中心になって
いるのだなぁと、つくづく思ったものだ。

 春まだ浅い2月のパリは霧雨に濡れていた。
ポプラやプラタナス、マロニエ等、冬木立の並木の沿道に、最高
の調和を見せてたたずむ町並み。一瞬暗いなと感じたほど、近寄り
難い静寂はロマンに似たものを秘めていた。

 フランス革命の戦禍を免れた町は、ベージュに少しグ懸けたような
寂び一色。
 何世紀も昔に、共同店舗式な棟続きの家を建てた立案に、建築に関わ
ってきた者として驚きを新たにした。
 古い町並みの外壁は全て石積みである。この建築様式をゴシック建築
というのか。地震があったらどうなるのだろう。ふと思った。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み