第40話 紳士の親切

文字数 472文字

 師走も押し迫った京都駅。二番ホームに降りた途端、
米原行きのアナウンス。各駅止まりと知りつつ寒い駅で快速を
待つより、早く暖かい車内へ入りたかった。後からくる快速に
乗り換える予定で鈍行に乗り込んだ。「次の快速は……と」一向
にアナウンスされない。草津?守山?で4分間の待ち時間がある
というから、多分乗り換えだろうと心待ちしていたが扉は開かない。
違ったか?急ぐ旅でなしどうでも良いと、電車に揺られていた。
うたた寝していたのだろう気がつくと、見るからに初老の紳士が
向かいの席に座していた。
つい聞きたくなり「次に快速に乗り換えるのはどこですか」
「次は米原ですよ」
「米原ですねありがとうございます」ああ終点までないのだと諦めた。
米原では一番後からゆっくり下車した。ところがである。
さっきの紳士が待っていて
「そこのエスカレーターを上がって右にゆき六番ホームに乗ってくださいね」
「ありがといございます」
 世の中にはこんな紳士もいるのだ。日本はまだ誇れるものが残っていると
 胸があっくなった。

  一人旅だと粋がっているが、こうして支えられているのだと思い知った。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み