第69話 長い歴史

文字数 638文字

 淡路島に来て三日目の朝。
ここにには会員制のリゾートホテルがある。
リタイアしてから30年、毎年、毎月、足繁くきた。
3年前に出資金は満額で一方的に返金された。が、
利用は従来通り格安。どうしたのだろうと思っていた。?
全国で30箇所あるホテルの経営者がこの4月から変わる。
コロナ禍でこゝ3年は、隔月に利用している。
30年も来ていると、支配人も、営業マンもフロントも、
みんな代わりに変わった。わたしは主のような気がする。
いつ来ても、最上階の決まった部屋へ通される。
こゝでは、趣味の月例会や県外の来客のもてなしもした。
30年といえば、人生の3分の1に当たる。
最近は、もうどこへも行かず、部屋から海を眺めるだけだったが、
昨日は、近くの梅園へ足を伸ばした。
 遅咲きの蝋梅が咲いていた。梅は3分咲き、桜と異なって全山
ぱっと、にほい立つような、色の派手さは無いが、近寄れば一本
一本に、個性があり趣があり、梅の良さをそれぞれが遺憾なく
発揮していた。入山料も駐車代も無料で、得したようで悪い気がした。
農産物を売っていたので、pの代わりに土産にいろいろと買った。
 梅の香の中、小さな堀を一巡りした。梅見の人はまばらでゆっくり
我が世の春を楽しんだ。風は冷たいがもう春だ。遠くの山が霞んでいる。
  
 よるとしなみには勝てん。
もう来ることはないだろうと思うと、感傷が寄せてくる。
朝から岩風呂に入り、一人呟いていた。ありがとう。さようなら。と。
                           2月28日

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