第59話 迷いの時代

文字数 612文字

 60歳代は、第二の人生の入り口。一つの不遇を除いて、
黄金期といっていいだろう。体力はある、時間もある。責任はない。
霊能者と聞けば、どこまでも追いかけ、色んな宗教を覗き一歩だけ
足を入れ、何もわからないまま退散した。宗教、特に霊感を売り物にしている
所は、金が嵩んだように思う。金と時間で未知の世界を体感できるのであれば、
覗いてみよう。と思った。あるお寺の坊さんは説法の時、潜在意識と顕在意識
について話し、「これは難しい、理解できた人は人生の心の盾となるでしょう」
と語った。お坊さんに受けた鑑定は納得していなかった。が、そんな折一部の
信者を従えて四国の最高峰石鎚山へ登頂したのである。その夜は、心酔した
信者の姿を見て、こりゃ、とてもついてゆけん。と思った。翌朝、朝の行の始まりは
際立つ岩場を登ることから。勿論、皆、白装束で鉢巻をきりりと締めて、
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」の9字を切って「エイー」と
手を上げのて次々と登ってゆくではないか。遅れてならじと私も9字をきり
山頂へ。みんなが揃うと坊さんは「あの雲を切る」という。
呪文を唱え「エイイ」どうあろう。流れる雲が本当に真っ二つに切れて流れた。
山は、信者は騒然となった。その後、目が醒めるまで、1年かかった。
 これを皮切りに霊能者探しは続いた。どこも、大なり、小なりでなく、
大なり、大なりお金が絡んでいた。

 しかし、雲の切れたのは紛れもない現実である。学者は何というか?








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