第36話 雪深々と(2)

文字数 584文字

 1Fのラウンジの窓の外。親子連れがカマクラを作っている。
小さい穴倉に、女の子二人が入った。お父さんは雪をせっせと運んでいる。
倉を潰して、見ているうちに滑り台にした。走行距離は2メートルか、家族の
笑い声が聞こえてくるようだ。
 父子2人連れは雪だるまに挑戦している。
ただ見るだけで、雪が温かく浮かれてくる。こうして近くへこなければ上階からは
見えない風景もある。

 空腹を覚え、売店でビールと栃の実煎餅を買った。雪見酒と洒落たつもり。
 
 除雪車ならん、工事用のユンボがホテルの周りの雪を除いている。
 除雪されたばかりの道を1台また1台とアウトした車が出て行く。
 ホテルの送迎の車もゆっくり出て行った。
 「閉じ込められて、仕方ないから列車で帰って明日車を取りにこよう」
若い2人連れの会話を小耳にした。スノータイヤがついていないらしい。

 雪は波状攻撃をかけた後、少し小止みになる。すると、ちょっと明るくなり、
長浜城が浮き立って見える。かと思えばまた雪に覆われて見えなくなる。

 娘から電話があった。
「母さん満足だろう。ワイハイはホテルのに繋いでもらったらいいよ」
「言う事なし。今、小さいが山の頂だろう。山はゆっくり降りたい。明日のことを
思案しても仕方がない。今がよければよい、傘寿万歳だと昂っているわ」
 
 雪は深々と降っている。
「お腹すいたよー(腹減ったよー)さあランチの時間だ。

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