第32話 南房総の旅(2)

文字数 539文字

 3日目、青空が広がり海は昨日のできごとがことが嘘のように
水平線は輝いていた。タクシーでお花畑へ向かう。ドライバーは、
「お客さん少し遅過ぎましたね」と言う。お花畑の盛りは過ぎた
と言うことだ。
 富浦や白浜より千倉がよかろうと千倉へ回てくれた。
洲の崎灯台を過ぎ、フラワーラインを通過した。10キロ余りの
ラインの菜の花はすべて終わりを告げていた。四国では今咲き
始めたというのに。列島の季の差を改めて知る。
 南房総の菜の花は、12月には春を呼んで咲き、1月には春を
告げて咲くという。なるほど言い得て妙である。

 千倉が近づき海岸線へ出た。
 あった、あった。一面のお花畑にはポピーが潮風と戯れていた。
金仙花は持ちこたえ、ストックは終っていた。
 南房総の春の風物詩、と聞く花摘園はほとんど閉店していた。

 花農家は、長次郎とか甚五郎とか自分の小屋に思い思いの
名前をつけていた。小屋の数だけオーナーが居るらしい。

 区画されていないこのお花畑は、米との2毛作で、4月に入ったら
田植えが始まるそうだ。すでに刈り取られたお花畑。花摘みのお客を
迎えているお花畑。チェンソーで刈り取る最中の農家もある。が、遠
目には絢爛とした広大な南房総のお花畑であった。
 願わくば花の盛りに、も一度訪ねたいと念じたものだ。

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