第57話 シルロードの謎

文字数 687文字

 義姉の3回忌法要の後、姪は遺稿を整理していた。
随筆集14号が2冊もあったので、一冊もらって帰った。
 義姉は私が下手な俳句を発句している間、エッセイストの
仲間入りをして毎年書いていたようだ。義姉は豊かな感性を
備えていたから、心に響くものを残している。

 何気なく目次を見ると「シルクロードを行く」青木サトル
が目に飛び込んできた。私と一緒に行ったシルクロードではないか。
時空は瞬時に超えた。私は昂っていた。
 平成17年成田空港をフライトしたとある。
違う、ちがう。関空発着で西安で乗り継いだのだ。おかしい。
思いながら読み進んだが、私の旅行記とは重なるところが少くない。
それでも、私は青木サトルさんとツアーで旅をしたのだ。

 年齢も私よりやや若いかなの年頃だったので、今お元気かどうか、
当時の編集者の知人に問い合わせた。お元気で、今年の2月00賞
をとって新聞に載っていたでしょうと言う。恥ずかしながら私は
見落としていたのだ。

 紀行の中、タクマラカン砂漠、ウルムチには通じるものを思い出した。
私か、彼かどちらかが、おかしいのだ。思い切って電話してみた。
留守電だった。留守電でホッとしたのだ。当時、リタイアして、旅行と
いうより中国の山水画の世界に夢中になっていたから、そのいずれかで
一緒したのかも知れない。と自信がなくなった。整理していない箱の中
に写真もパンフレットもある筈だが、引っ張り出す意欲がない。
霞んで思い出せないが、その昔、青木某から、シルクロードの紀行文を
受け取ったではないか。ならそれはどうした。手元にない。

 高齢のせいにするには、あまりに侘しい。
 やっぱり電話してみよう。








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