第20話 鳴沙山

文字数 623文字

 夜汽車に乗って12時間。この夜汽車で一人目の病人が出た。
名古屋から母娘連れで参加しているお母さんだ。
柳園につき、ここでバスに乗り換えて敦煌へ。
街並みを出たらすぐ砂漠だ。この辺りは地下資源が豊富な街で
あるらしく、暮らし向きも豊かならしい。黒い石ころの砂漠だった。
驚くなかれ、この砂漠でトイレ休憩があった。
さらに驚いたのは、女性たちも用足しを済ませたことである。

 映画敦煌の舞台になった敦煌城。繰り広げられた死闘を思い出した。
日中合作アカデミー賞、受賞作だっと思う。。
 
また砂漠を走り莫高窟へ。色褪せた古代石仏の群像に息を呑んだ。

 この旅の私の、ハイライトは何といっても鳴沙山であった。
太陽に連動して、白い砂山は自らの影をくっきりと写す。
朝は東面が白く、西が黒く、夕映には西面が白山になる。
得もいえぬ曲線を描く白と黒。陰と陽とのコントラストに昂る。
ラクダに乗って山裾までゆく。
神秘的な白い砂山は、山頂まで300段はあろうか階段がある。
東西40キロ、南北20キロの連山の峰に立つ(山は低い)

 眼下の月牙泉がほんとうに三日月のように見えた。
傾いた陽を受けて、みるみるうちに黄色からエメラルドに
変わっていった。私は、ひどくこの泉に感動した。
 
 砂滑りで下山する。一足滑れば1メートル。さらさらした
砂山は無重力の世界にいるように体が軽い。心も軽い。

 この後、二人目の病人が出た。次々と香辛料に胃腸が侵されてゆく。
 とうとう私も、ダウンして兵馬俑は棄権した。


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