第21話 サフランシス

文字数 672文字

 娘も私もまだ現役中である。時間も費用も使いたい放題でない。
ツアーでなしに娘がスケジュウルを立てた。初日の日航ホテルは、
日本で使っているホテルよりランクが下のようだ。2度と来ることは
なかろうからと、ランクアップした。2日間は娘と行動を共にしたが、
3日目は別行動をした。どのようにして行ったのか定かでないが私は、
ヨセミテ国立公園へ。そこで雄大な自然。長い年月をかけて氷河に
削られたヨセミテ渓谷に息を呑んだ。

 ヨセミテのザ、ノーズ。
 エルキャピタンのどのルートであるのかはわからないが、花崗岩の
一枚岩を登る人の姿を、大勢の人と対岸から見ていた。人は小さく、
虫が点くらいにしか見えなかった。
 横で見ていた外人が、今登っているあの人、昨夜は岩棚か、または
ハンモックに体を縛って過ごしたのだろう。と話してくれた。
が、私は会話ができないのでどこか違っているかもしれない。

 登頂まで4~5日もかかるという。最小限の食料は持っているのだろう。
が、排尿べんはどうするのだろうか。大いに気にかかるのだ。
 夢を追うことは大変なことだと、虫のように小さい人をみながら
思うが、命がけで上り詰めた達成感は、当人にしかわからないだろう。
 往復7~8時間を要するので、ゆっくり佇む時間はなかったが、
ダイナミックなあの花崗岩や点の人は深く脳裏に刻まれている。

 ショッピングデーと言っていた娘はたくさん買い込んで、やれ
やれこれでストレスが解消したと満足気だった。
安かった、安かった。と言っていたから質より量だったのだろう。

 坂の町サンフランシスコへ娘と旅しただけで私は満足だった。



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