第79話 米寿を迎えて(2)

文字数 650文字

 目に見えぬ世界に憧れ、諦めたころ、
やがて二十数年になるだろうか。
九星気学の喜堂先生に巡り合い、指導を受けた。
気学により宿命が転換出来るのではないかと期待した。
学説に従い、祐気を摂取するため同志と、度々海外へも足を伸ばした。
「私は七十三歳が定命」と語っていた通り先生は「七十三歳」で逝った。
 残された同士の交流は今も続いているが、誰も昔の元気はなく、
諸行無常の感否めない。因みに私は五黄土星の生まれで欲深く波乱ありと占う。
この世は並べて「なるようにしかならない」これは私の持論であり、諦めであり
結果論である。
 おめでとうと、赤いちゃんちゃんこの私の還暦を祝ってくれたふたまわりも若い
親方は、急いで虹の橋を渡った。
 有り余る時間は農耕民族の血を掻き立て、山裾の草むらを花の園にした。
道ゆく人が立ち止まり、散歩の人が足を伸ばすほど、園には季節の花が咲き次いだ。
が、いまは昔、写真で見るしかない。
 水の流れのように、流れ去ったよき時代。八十路は遠い未来と思っていたあの頃を、
今、懐かしがっている。人生でいちばん輝いた時代だったかもしれない。
 九十歳が何がめでたいという方もいる。米寿めでたくはないが、ありがたいと思っている。
たくさんの方々に支えられて今日まで生かされてきたか、感謝の一語に尽きる。
明日は未知数。今日一日を悔いなく楽しく暮らそう。
 一人の旅は終わりに近づいた。
 終わりの旅に荷物はいらない。身も心も軽く転ばぬように前を向いて歩こう。
 己のために歩こう。
 “顕在意識の中で大往生“ ありがとう。









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