第37話 雪深々と(3)

文字数 596文字

 投宿3日目。風があるのか斜めに降りつける。
観測史上初とも、見たことがないとも、ニュースが流れている。
12月27日は、積雪と道路の凍結のためホテルへの車の出入りは
夕方迄零。沢山の人を見かけるから、ホテルに閉じ込められた感はない。
列車も終日ストップしたままである。
 学校の冬休みを活用してか、子供連れが多い。どの子も満足そうに
見える。ふりさけ見てもどうにもならんことだが、私は子育ての時、
トンネルの中だったのだから、と自分を慰めている。それでも、其々に
良い子に育ち、良い社会人になってくれた。雪だるまを作っている子に、
我が子らを重ねて「ありがとう。ごめんね」ひとり呟いている。

雪よ降れふれ、今日は13Fでフランス料理の昼食。私と6人の家族連れ
だけだった。静かだ。番いのトンビが目線を飛んでいる。この雪の中、私の
好きな、かいつぶりは、何処にどうしているのだろう。気にかかる。

 露天風呂の天井に簾を乗せてあるので、雪解けの雫が落ちるから使用中止の
貼りがみがある。この辺りは今まで雪に縁遠かったから対応できていないのだろう。

 夕方雪が小止みになったら地平線がおぼろに見えた。やはりまーるく見えた。
 
 北の空に黒い雲。一天俄かにかき曇りアッという間にまた降ってきた。よしよし。
それでよいのだ。部屋の中央より私の居る窓辺は空気も冷たい。
 
 彦根、米原の積雪を思うと明日も帰れないだろう。ホテルは確保した。


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