第16話 シルクロード(序章)

文字数 534文字

40年は越えているであろうか?
NHKが立派な航空写真を出した。亡夫はどうして入手したのか
定かでないが、ずっとシルクロードへの夢をもっていた。
「二人でゆこう。生涯で最高の旅にしよう」
つられて私もぜひシルクロードへ行きたいと夢を共有した。
ここはジープ、ここは現地人に案内を乞う等、遠大な計画を立てた。
そのため、二人で3年間積み立てをした。
昭和57年春、積み立ては完了した。二人分のその証は私の手元にある。

 いそいそとBKへ向かった。

「奥さんお利息ですか」?
「ええー、元利合計よ」
「積立金は全て社長が引き出しています」
「そんなこと出来るはずないだろう。通帳はここにある」
「それがねー責任はワシが取るから」と
亡夫が強引に脅しでもかけて引き出したのだろう。
だいぶ株で穴を開けていたようだから

 穏やかでないのは私。頭が真っ白になり、
喚き散らして、何もかも放り出して入院した。

 入院3日目に長男を連れて見舞いに来た。
「面も見たくない帰ってくれ」また怒鳴った。

 真剣に離婚を考えた。
待てよ。手塩にかけた全てを捨てる勇気があるか?

その頃から、亡夫は体調がすぐれず、
入退院を繰り返し60年に逝ったから、
病人相手に、勝つとわかった喧嘩はできなかった。

 シルクロードは夢のまた夢に終わった。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み