第2話 タヒチを経て

文字数 1,198文字

 細木数子の六星占術が全盛の頃、私は九星気学を学んでいた。
気学教室が、タヒチ、イースター島への旅行を企画した。九州から一名、四国から三名、本州
から主催者を含め六名、計十名で平成十三年四月、羽田をエールフランス航空のジェット機で
飛び立った。
 十一時間後、タヒチのパペーテ空港に着陸。春寒の東京を発った一行は滴る汗に戸惑いなが
らセスナ機に乗り換えて十分後、対岸のモーレア島に着く。時差は十九時間、通貨はフランで
一フン二十二円十九銭。島の銀行らしくないBKで両替した。
 宿は島では大きい方でソフィテルイアオオラという宿だった。民宿調のコテージで、椰子の
木陰に点在していた。ここでは3泊の予定で同室のHさんと入室したが、旅装も解かぬうちに
ヤモリの歓迎の挨拶を受けた。やっぱり南国らしいなと思った途端、Hさんは悲鳴をあげた。
他のコテージからも苦情が出て、すったもんだの末、一拍一○○○ドルの差額海上コテージへ
移動。ヤモリの宿はE級で移A級だと後で知った。
 階段を降りると、そこは遠浅のような海だった。朝焼けも落日も、居ながらにして満喫でき
たし、コテージは渡り廊下で繋がり、お互いに行き来して親交を深めた。
 Hさんは国会議員の妻女で絵描きさんでもある。最初は少し敬遠していたが、十日間の旅の
終わりには再会を約束するまでになっていた。
 島はちょうど瓢箪の形になっており、大きい方をタヒチヌイ、小さい方をタヒチイチと呼ん
打。初日は自由行動だったので、広島のY(リーダー)さんと湾岸道路へ出たり浜辺を散策。
浜辺では椰子が倒れる時に周辺の木までも薙ぎ倒している。倒れた椰子も倒された木も湿地帯
の中で風化を待っている。これが自然淘汰なのかもしれない。倒木の間で小蟹がひしめき合う。 
 島巡りの観光バスは、海岸線を経て整備された登山道に入る。道の右にも左にもバナナが実
をつけ、バイン畑が続いていた。高々五○○メートルほどの山だが、とんがった岩山には、今
も神が住んでいるような印象を受けた。
 見晴し台で大雨になり、一軒だけある小さな店でアイスクリームを買って雨宿りする。
スコールではないらしく、小雨がずっと続き、神の山に登ることも島を展望することも出来
ず、心を残して下山した。
 すっかり晴れ渡った三日目、みんなで浜に出て二時間ほど砂に潜った。昨日の雨で気温は、
二十七度と低いが、照りつける太陽は痛い。砂浜は私たちだけだった。大の字になって天空
を見上げる。彼方に空の青と溶け合うことのない海の碧が丸い水平線を描いている。やっぱり
地球は丸いのだ。
 食料は豊富だったが、私はパンと果物と、すこしのビールで過ごした。フランス領だけあっ
てフランスパンは美味しかった。
 船に乗り三十分後再びパペーテへ。ハイアットホテルに投宿。仮眠の後、午前二時三十分
パペーテ空港を飛び立った機は、イースター島へ向かった。    イースター島へつづく
 

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