第35話 元帥試験
文字数 2,039文字
どうしてそれを……?
やはりこの男、組織の人間なのか……?
彼は混乱して言葉を失った。
「そうだよ。俺は組織の人間さ。この国を実質的に支配している組織のね」
浅倉喜代蔵はニタニタしながら言った。
まるで心を読んでいるかのようだ。
悟られている……
いや、もしかしてアルトラか?
心を読むアルトラがあったって不思議じゃない……
くそ、この状況、いったいどうすれば……
ウツロの思考回路はますます乱された。
「安心しな、ウツロくん。これはアルトラじゃない。俺は予想して君の考えていることを当てているだけだよ」
「……」
ウツロは恐怖に加え、
「俺はその組織のナンバー2、
ウツロは相変わらず固まったままだが、もしやと思うところがあった。
「そう、これは『試験』なんだ、ウツロくん。君が閣下のお
ウツロは
それは目の前にいる中年男にではなく、『閣下』という単語に対してだった。
日本を支配するとまでいうその組織のトップ、
まるで異次元だ……
俺なんかには想像すらつかない……
そう思うと、あまりの
しかし浅倉喜代蔵は、そんなウツロのしぐさに満足そうだった。
「こわいでしょ? マジでこわいんだよ、あの人。この俺ですら、気分
何が言いたいんだ、この男は?
ウツロは口を
「閣下もじゅうぶん、わかっているんだよ。俺に手え出したら、ただじゃすまないってことをね。つまり、閣下には負けるけど、俺もかなりヤバいってこと。何が言いたいか、わかる?」
言いたいことはわかってきたが、いちいちあおるのはやめろ。
いや、これも
ウツロは
「俺はね、ウツロくん……その気になれば、次の瞬間、君をこの世から消すことができる……ひとかけらの肉も残さずにね……それくらい強力なアルトラを持ってるってことだよ」
浅倉喜代蔵は顔を寄せ、スローモーションのように言った。
ウツロは飲んだ生唾がのどにつかえそうな感覚に
「どうする? 虫を
浅倉喜代蔵はヘラヘラしている。
いけない、このままでは飲み込まれる……
どうする?
この男の言うとおり、アルトラを出して戦うか?
いや、やめたほうがいい……
理由はわからないが、俺の体がそう言っている……
これまでの
とにかく、この男と戦うのだけは、絶対にやめろ、と……
「試験とは……」
「ん?」
「あなたは試験とおっしゃった……その内容を、教えていただきたい……!」
「……」
細胞が戦闘を止める以上、この男の提案を飲むしかない……
山のように地面に食らいつく体をやっと動かし、ウツロはイチかバチかの
「面白い……素敵だねえ、ウツロくん。そのがんばっている感じ、気に入ったよ。試験の内容はね、閣下から質問を一つ授かってきたんだ。それを君に答えてもらって、その解答に俺が満足すれば、この場で君に
浅倉喜代蔵は
「君にはひき肉になってもらうよ?」
その
逆らってはならない、逆らえば、すなわち……
「いいかな? いいなら、その質問を言うよ?」
ウツロは緊張で
「……お願いします」
唾も飲み込めなくなった口で、そう言った。
それを受け、浅倉喜代蔵は
「ウツロくん、君は、自分が生まれてきたことを、不幸だと思うかい?」
「……」
意外な内容に、ウツロは驚いた。
しかし、心の
(『第36話 アップグレード』へ続く)