第39話 忸怩
文字数 800文字
「僕などには難しいですが、はい、なんだか雰囲気が好きなのです」
「へえ、そうなんだね」
夕食後、
真田虎太郎は画面に映る若い総理の答弁に夢中だが、武田暗学のほうは意に
「
「
「ナイフですか、なるほど。確かにキレッキレですね」
「彼には昔、
「……」
真田虎太郎は思い出した。
ウツロの父・
その娘・万城目日和は実は生きており、ウツロとアクタとは別な場所に保護され、暗殺の教えを受けたと。
その万城目日和がついに姿を現し、どうやらウツロたちをつけ狙っているらしい。
直接聞いたわけではないが、噂に戸は立てられない。
ウツロや姉たちが会話しているところを、意図せずとはいえ耳にしている。
自分を巻き込むまいと気をつかってくれている。
それはじゅうぶんに理解できるのだが、自分だってアルトラ能力を持つ
配慮には感謝をしつつ、仲間はずれにされているようなもどかしさが、彼の心の中にはあった。
いまだって、食堂でみんなが新しい情報について議論しているようだ。
自分もその輪に加わりたいのに……
真田虎太郎は体を丸めるように、テレビに映る鬼堂総理の鋭いまなざしとにらめっこをした。
そのまなざしが、モニターの外側へ向いているとも知らずに――
(『第40話