第55話 万城目日和の正体
文字数 1,279文字
姿を現した影。
それはウツロのよく知る人物だった。
「
ウツロとは同じクラスのやんちゃ坊主だ。
しかしその顔は、普段の彼とはむしろ真逆な、殺意に満たされたものだった。
眼光はナイフのような鋭ささえ持っている。
「よう、
「……」
「彼」は腰に手を当ててウツロにたずねた。
「鼻のいいおまえをだまくらかすのに、相当気を使ったんだぜえ? 教えてくれよ、どうして俺が万城目日和だってわかったんだ?」
「これさ」
ウツロはブレザーの
「
「ふん」
柿崎景太、いや万城目日和は顔をゆがめて笑った。
「
手を振ってあきれるしぐさをする。
「なぜこんなことをした?」
ウツロの問いかけに、万城目日和は目玉をギョロッとさせて向き直った。
「なぜ? おまえいま、なぜって言ったか? おまえが一番よくわかってるだろ、佐伯? いや、毒虫のウツロ? てめえの親父、
「……」
天を仰いでの
その叫びは倉庫のいたるところを震わせた。
何も言えない、言えるわけがない。
ウツロにはかける言葉など見つからなかった。
ひとしきり吠えると、万城目日和は深呼吸をした。
「わりい、つい感情的になっちまった。まあ、正直言って、いまさらどうでもいいんだよ。過去が変えられるわけじゃねえしな」
「……」
ウツロは
「だがな、これだけは言いたいんだ、あえてな。ウツロよ、聞いてくれるか? 俺の話」
静かな、しかし強いまなざしが彼に刺さった。
「言ってくれ、万城目日和。俺にはそれを聞く義務がある」
そう返した。
「はっ、義務か。真面目なんだな、おまえ。損するぜ? そういう性格はよ」
「いいから、おまえが言いたいことを言ってくれないか?」
「ふん、じゃあ、言うぜ?」
万城目日和は姿勢を正した。
その
「ウツロ、俺の人生を、返せ」