第47話 ウツロ VS 氷潟夕真

文字数 397文字

「アルトラ、ライオン・ハート……!」

 氷潟夕真(ひがた ゆうま)は一体の、獅子(ライオン)をモチーフにした獣人の姿に変貌を遂げた。

「それが、お前の能力か……!」

 ウツロは驚愕した。

「さあ、ウツロ、お前も変身するんだ。毒虫の戦士の姿にな」

「……」

 ウツロは意を決した。

 戦わなければ、龍子(りょうこ)が危ない。

 彼は氷潟夕真の言葉にしたがうことにした。

「虫たちよ――!」

「ふん」

 刀子朱利(かたなご しゅり)はクスッと笑った。

 旧校舎のいたるところから、異形の軍勢が集まってくる。

 「(あるじ)」の命にしたがい、その本懐を果たすために。

「……」

 氷潟夕真は隠しつつ生唾を飲んだ。

 その姿、いや、漂ってくるオーラのような覇気に。

 虫という存在の本質、その結晶であるような姿。

 部分的に軟体だったり甲殻だったり。

 醜いようで美しい。

 そんなことを考えていた。

「さあ、氷潟、言うとおりにしたぞ」

「よし、行くぞ、ウツロ……!」

 こうして二人の戦いの幕は、切って落とされた――
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

氏名:ウツロ


父・似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)と兄・アクタの壮絶な死から約半年、その事実と向き合いながら、現在はアルトラ使いを管理・監督する組織「特定生活対策室」の意思のもと、佐伯悠亮(さえき ゆうすけ)を名乗り、名門私立である黒帝高校(こくていこうこう)の学生として、充実した日々を送っている。

彼を救った真田龍子とは相思相愛の仲である。

趣味は思索、愛読書はトマス・ホッブズの「リヴァイアサン」

龍子の弟・虎太郎の影響で、音楽にものめり込んでいる。


アルトラ名:エクリプス


虫を自由自在に操ることができる。

虫を身に纏い、常人離れした能力を持つ戦士へと変身することもできる。

氏名:真田龍子(さなだ りょうこ)


魔道へ落ちかけたウツロの心によりそい、彼を救い出した少女。

慈愛・慈悲の精神を持っているが、それを「偽善」だと指摘されることもあり、ジレンマを抱えている。

ウツロとは相思相愛の関係。

真田虎太郎は実弟。


アルトラ名:パルジファル


他者を肉体的・精神的に治癒することが可能であるが、能力を使用するときの負担が大きい。

氏名:南柾樹(みなみ まさき)


はじめはウツロを邪険にしていたが、それは彼に自身の存在を投影してのことだった。

アクタの遺志を受け継ぎ、ウツロを守ると心に誓っている。

いまでは彼のよき友である。


アルトラ名:サイクロプス


巨人に変身できる。

絶大なパワーを持つが、その姿は彼のトラウマの結晶である。

氏名:星川雅(ほしかわ みやび)


似嵐鏡月は叔父であり、すなわちウツロとはいとこの関係である。

両親はともに精神科医で、彼女もすぐれた観察眼を持っている。

傀儡師の精神を持つ母の操り人形として育てられ、屈折した支配欲求を抱いている。


アルトラ名:ゴーゴン・ヘッド


「二口女」よろしく、髪の毛と後頭部の大口を自由自在に操ることができる。

氏名:真田虎太郎(さなだ こたろう)


真田龍子の実弟。

姉同様、慈愛・慈悲の精神を持っている。

ウツロと同じく考えすぎてしまう傾向がある。

好きな作曲家はグスタフ・マーラー。


アルトラ名:イージス


緑色の「バリア」を張ることができる。

他者にもそれをかけることが可能である。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み