第33話 たこぐもチャレンジドへ
文字数 1,205文字
「
ウツロは携帯のブラウザで個人ブログをのぞきながら、記述されている情報をそらんじた。
まさかとは思ったが、さくら
年齢の割には、どこか幼く見えるところも印象的だった。
「日本経済の番人が障害者ってのは面白いわな」
柿崎景太はノートPCを叩きながら
「きっと想像もつかない努力をされたんだろう。
聖川清人はのぞき込むように顔を寄せて言った。
「うっせーの、聖川。てめえは
「何をっ!?」
「ひっ――」
聖川清人が赤本を振りかぶったので、柿崎景太は条件反射で身を守った。
「こらこら二人とも。そろそろ着くから、準備をしなさい」
古河教諭はハンドルを握りながら二人をいさめた。
「今日は浅倉先生もお見えになると聞きましたが」
「うん、天下の黒帝の学生さんが来てくれるってんで、港区にあるたこぐもの本部から駆けつけてくれるそうだよ」
たずねたウツロに、古川教諭はラジオのボリュームをいじりながら答えた。
「どんな人物か気になります。でも、黒帝ってそんなに有名な学校だったんですね」
「……」
ウツロ以外の三人は口をあんぐりと
「佐伯よ、おまえまさか、それ知らないで黒帝に編入したの?」
柿崎景太は体を震わせながら問いかけた。
「どういうこと?」
「あのな、佐伯。黒帝高校とえば、日本でも最高レベルの偏差値を
「へえ、そうだったんだね」
「そうだったって、はは……」
「宇宙人だな……」
あっけらかんと答弁するウツロに、柿崎景太と聖川清人はあきれ返った。
「さあさあ、みんな、到着したよ。あそこがたこぐもチャレンジドだ」
古川教諭が視界に入った施設を指さしたとき、後部座席の二名はすっかりうなだれていた。
いっぽう、ウツロは考えていた。
浅倉喜代蔵か。
さくら館を訪れた浅倉卑弥呼が、もし組織の放った刺客だと仮定すると、実の兄であるその人が何の関係もないという可能性は否定できない。
それにこのタイミングで出会うことになるのも、なんだかできすぎている。
何かがあるのかもしれない。
決して油断はできないぞ。
彼はそんなことを、自分自身に語りかけた――
(『第34話