シリーズ第一作のあらすじ

文字数 1,742文字

 孤児(こじ)である十六歳の少年・ウツロは、同じ境遇・年齢の少年・アクタとともに、暗殺の請負(うけおい)稼業(かぎょう)とする殺し屋・似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)の手によって、山奥の(かく)(ざと)で育てられ、厳しくも楽しい日々を送っていた。

 しかしある夜、隠れ里に正体不明の凶賊(きょうぞく)来襲(らいしゅう)する。

 似嵐鏡月とアクタの助けによって逃がされたウツロであったが、彼はこの世とあの世の(さかい)()くというあやかしの桜・魔王桜(まおうざくら)に出会い、アルトラと呼ばれる異能力(いのうりょく)を植えつけられてしまう。

   *

 目覚(めざ)めたウツロは、とある洋館風アパートの医務室で、同年代の少女・真田龍子(さなだ りょうこ)の手によって介抱(かいほう)されていた。

 彼は同じくアパートの住人である星川雅(ほしかわ みやび)から、魔王桜とアルトラの情報を得る。

 彼女らとはホームメイトの南柾樹(みなみ まさき)、龍子の弟・虎太郎(こたろう)も含め、四人の少年少女たちはすべてアルトラ使いだった。

 そのアパートはアルトラを有する者を管理・監督するための組織・特定生活対策室(とくていせいかつたいさくしつ)の支部のひとつだったのだ。

 彼らとの交流をとおして、ウツロは人間世界の()いも(あま)いも味わうことになる。

 そんなおり、ウツロのもとへアクタから連絡が入り、彼は北にそびえる山へと呼びだされる。

 似嵐鏡月とアクタの生存を確認したウツロは、喜びいさんでアパートを抜けだし、その場所へと急いだ。

   *

 指定された場所へ到着したウツロだが、現れた似嵐鏡月は、アクタとウツロが二卵性双生児(にらんせいそうせいじ)の兄弟であること、自分がその父親であることを告白する。

 放心するウツロに似嵐鏡月は、アクタと殺しあえと命じる。

 暗殺を仲介(ちゅうかい)する組織と(えん)を切るためのケジメとして、二人の始末を命じられていたのだ。

 隠れ里を強襲した賊も、似嵐鏡月が組織に依頼して放った者たちだった。

 そこに星川雅が登場、自分は似嵐鏡月の姉の子、つまり(めい)であることをウツロとアクタに告げる。

 似嵐鏡月はかつて、暗殺を家業(かぎょう)とする名門・似嵐家(にがらしけ)の次期当主という立場にありながら、その重圧に()えられず、出奔(しゅっぽん)していた。

 星川雅は家名(かめい)(けが)した罪で、似嵐鏡月を処刑すると宣告(せんこく)する。

 激しい戦いを()(ひろ)げるも、叔父(おじ)(さき)んじられ、あわや命を奪われそうになる。

 だがそこで、彼女は自身のアルトラを発動させる。

 難を(のが)れ、ウツロとアクタを誘惑する星川雅だったが、そこに真田龍子と南柾樹が()けつける。

 南柾樹はウツロとアクタに、真田龍子は星川雅によりそい、平穏(へいおん)な空気を得るが、そこで似嵐鏡月が覚醒(かくせい)する。

 彼もまたアルトラ使いであり、自身のアルトラを発動させ、ウツロたちは窮地(きゅうち)に立たされる。

 だがそこに、龍子の弟・虎太郎が現れる。

 彼のアルトラで一度は似嵐鏡月を追いこむも、再び絶体絶命となる。

 アクタの犠牲(ぎせい)によって、さらに追いつめられたウツロは、アルトラが暴走し、醜い毒虫の姿へと変じてしまう。

 しかし真田龍子の助けによって、ウツロはその能力を自由に操ることができるようになる。

 壮絶(そうぜつ)な戦いの末、ウツロはついに、似嵐鏡月を打ち破った。

 そして皮肉にも、最後になってやっとではあったが、父と子は(きずな)獲得(かくとく)したのだった。

 似嵐鏡月とアクタは、ウツロの成長に満足しながら、息を引き取った。

 ウツロと真田龍子は愛を告げ合い、ともに生きていくことを約束しあった。

 第二作『アオハル・イン・チェインズ』の舞台は、そこからおよそ半年後となる――

(『本編』へ続く)
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登場人物紹介

氏名:ウツロ


父・似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)と兄・アクタの壮絶な死から約半年、その事実と向き合いながら、現在はアルトラ使いを管理・監督する組織「特定生活対策室」の意思のもと、佐伯悠亮(さえき ゆうすけ)を名乗り、名門私立である黒帝高校(こくていこうこう)の学生として、充実した日々を送っている。

彼を救った真田龍子とは相思相愛の仲である。

趣味は思索、愛読書はトマス・ホッブズの「リヴァイアサン」

龍子の弟・虎太郎の影響で、音楽にものめり込んでいる。


アルトラ名:エクリプス


虫を自由自在に操ることができる。

虫を身に纏い、常人離れした能力を持つ戦士へと変身することもできる。

氏名:真田龍子(さなだ りょうこ)


魔道へ落ちかけたウツロの心によりそい、彼を救い出した少女。

慈愛・慈悲の精神を持っているが、それを「偽善」だと指摘されることもあり、ジレンマを抱えている。

ウツロとは相思相愛の関係。

真田虎太郎は実弟。


アルトラ名:パルジファル


他者を肉体的・精神的に治癒することが可能であるが、能力を使用するときの負担が大きい。

氏名:南柾樹(みなみ まさき)


はじめはウツロを邪険にしていたが、それは彼に自身の存在を投影してのことだった。

アクタの遺志を受け継ぎ、ウツロを守ると心に誓っている。

いまでは彼のよき友である。


アルトラ名:サイクロプス


巨人に変身できる。

絶大なパワーを持つが、その姿は彼のトラウマの結晶である。

氏名:星川雅(ほしかわ みやび)


似嵐鏡月は叔父であり、すなわちウツロとはいとこの関係である。

両親はともに精神科医で、彼女もすぐれた観察眼を持っている。

傀儡師の精神を持つ母の操り人形として育てられ、屈折した支配欲求を抱いている。


アルトラ名:ゴーゴン・ヘッド


「二口女」よろしく、髪の毛と後頭部の大口を自由自在に操ることができる。

氏名:真田虎太郎(さなだ こたろう)


真田龍子の実弟。

姉同様、慈愛・慈悲の精神を持っている。

ウツロと同じく考えすぎてしまう傾向がある。

好きな作曲家はグスタフ・マーラー。


アルトラ名:イージス


緑色の「バリア」を張ることができる。

他者にもそれをかけることが可能である。

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