それから

文字数 1,174文字

 驚いたぼくは、あわてて庭へ出た。
 するとそこには、なぜか植えたばかりのミカンの木の苗があり、その根元に、茶トラ先生がズボンとカッターシャツ姿で半分埋まっていた。
 それでぼくは急いで茶トラ先生の手を引き、先生を救出した。

「わしは今日、公証人役場で遺言にこの土地と建物を、永久に誰にも売らないということと、わしが死んだら、骨をこの木の根元に埋めてくれということを書いたのだ。そしてその足でミカンの苗を買いに行き、そしてここに植えた。そしたらいきなりこの木の根元に吸い込まれた」
「あははは、そうだったんだ。埋めたのはぼくだよ。で、埋めろと提案したのは妹さ」
「お前ら、何という酷いことを!」



 それからぼくは、デビルの家に飛んで行き、デビルとともにお母さんの病院へと向かった。
 そしてデビルのお母さんに薬を渡し、必ず毎日飲むようにと言った。

 デビルのお母さんは「これは何という薬ですか?」ときいたので、ぼくは「五十年後の未来に、田中浩二先生という、すごいお医者さんが開発した特効薬だから、これを飲めば必ず治ります」と教えてあげた。

 それからしばらくして、デビルのお母さんの病状はどんどん良くなっていった。
 主治医の先生も驚いていた。
 そして二ヵ月もすると退院でき、全く普通の生活が出来るようにもなった。
 
 それから一年ほどして、デビルに歳の離れた弟が生まれた。
 名前は浩二君。
 田中浩二君だ。

 だからぼくは、もしかしたらあの薬を開発した田中浩二先生は、デビルのお母さんが生んだのではないかと、今でも思っている。


「タイムエイジマシン デビルのお母さんの病気」完
 ここまでお読みいただきありがとうございます。
 

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職場ですい臓がんを見つけた時、ご本人にどうやって説明しようかって、とても悩みます。
「とにかく大きな病院で詳しい検査を受けましょうね」って言って、すい臓がんの名医を紹介したりします。
だけどそのとき、その患者さんの心には見る見る暗雲が立ち込め、絶望的な気分になっているのでしょうね。それはご本人の様子を見れば痛いほど分かります。だから辛いのです。

医学が進歩して、どんな癌でも、簡単に治る時代が来ることを、切に願っています。
そんな私の思いから、せめて私の空想のお花畑の中だけでもと思って、タイムエイジマシンの後半で、こんなストーリーを思いつきました。

どうか、これをお読みになった方の中から、田中浩二先生のような名医が現れて欲しい。
名医になるためには英語力も必須です。
そして癌で辛い思いをする人が一人でも少なくなる世の中がくることを切に祈って、この作品を終わりたいと思います。
お読みいただき、本当にありがとうございました。
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 次回から新エピソードに入ります。
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