未来の医者を探せ

文字数 1,069文字

「それで、どうするの?」
「未来へ行って治療法を見付けるしかないだろう。そうするために田中君のおふくろさんの資料を、あらいざらいもらったのだ」
「茶トラ先生は未来に知り合いのお医者さんでもいるの?」
「知り合いの医者はおらんこともないが、未来に生きておる保証は全くいない。わしはすでに結構な年寄りだ。だからわしの知り合いの医者も、すでに年寄りだ」
「そうかぁ…、だけど茶トラ先生は、気持ちはとても若いと思うよ」
「お前さんがそう言ってくれるとわしはありがたい。ところでイチロウ、お前さんの未来には、知り合いの医者はおらんのか?」
「未来の知り合いの医者って、ぼくは小学生だし、そんなのいるわけないじゃん」
「それじゃ、医者になりそうな同級生なんかいないのか?」
「同級生? ああ、そういえば妹が医者になりたがっていたよ」
「それだ!」
「どうするの?」
「さっそく、妹さんをここへ連れて来るんだ」
「妹を連れてくる?」
「そうだ」
「ここへ?」
「あたりまえだ」
「どうして?」
「いいからいから」
「またいいからいいから?」

 それからぼくは一度家に帰り、宿題をしていた妹の亜里沙を無理やり引っ張り出して、茶トラ先生の家へ連れてきた。
 妹は不思議そうに茶トラ先生の実験室のガラクタなんかを見ていた。

「亜里沙ちゃんといったね」
「はい」
「何年生?」
「五年生です」
「それじゃお兄ちゃんとは一つ違いだな」
「はい」
「それで、実は…おじさんの、たっての頼みごとがある。聞いてくれるかね?」
「何ですか?」
「たのむ。お医者さんになってくれ!」
「ああ、それだったら、私の将来の目標ですけど…」
「おお、それは良かった。それじゃちょっと待ってて」
 そういうと茶トラ先生はどういうわけか、家の奥からたくさんの古いノートやら参考書やらを持ってきた。

「全部君にあげるから、これを参考にして、これからたくさん勉強しなさい」
「これ、もらってもいいのですか?」
「もちろんだ」
「それはありがとうございます!」
「しかしだ。あ~、勉強というものには要領というものがあってだな。それをつかめば、案外うまくいくものなんだ」
「そうか! 茶トラ先生は、勉強ならバリバリだよね」
「そのバリバリはいいが、ただガリガリ勉強すればいいというものではない」
「ガリ勉はだめなのですか?」
「そうだ」
「それじゃ、どうするの?」
「とにかく勉強には、要領というものがあるんだ。で、これからそれをお前さんたちに授けてしんぜようと思う」
「やった!」

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