またデビルが行方不明

文字数 1,527文字

 実際、デビルの行方不明には前科がある。
 運動会のマイムマイム事件だ!

 それはさておいて、それから茶トラ先生は実験室にある、いろんな訳のわからないガラクタのようなモニターの前に座り、かちゃかちゃとキーボードを操作し始めた。

「スワンボートにも、二機のソラデンにもナビゲーションシステムを積んであるんだ。そしてこれらの現在地は、衛星回線を通じてこのモニターで見ることができる」
「へぇー、茶トラ先生ってケイタイすら嫌いだって言ってたわりには、ITなんかには結構強いんだね」
「当たり前だ。わしは痩せても枯れても物理学者だ!」
「そうだったね」
「それで現在デビル君は、あ~、お! 何と現在シンガポール沖にいるようだ」

 それでぼくらは、デビル捜索の為、早速スワンボートで出発した。
 ちなみにスワンボートは、茶トラ先生のアイディアで空色と白に再塗装されていた。

 スワンボートはグラスファイバー製だから、布製のスーツみたいに染めQで塗装する必要はなく、何でもウレタン塗料っていうので塗装したそうだ。

 で、空色と白に塗装すると、空と雲を背景に保護色となり、それで目立たなくなっていたから、昼間でも、目にも止まらぬ速さであっという間にぶっ飛んでしまえば、誰にも気づかれずに出発できるらしかった。

 そういうわけでぼくは最初からペダルを全力でこぎ、ボートは一気に3000メートルくらいにまで急上昇した。
 それからナビゲーションに従い、茶トラ先生はスワンボートを、デビルの乗っているソラデン二号のいる方角へと飛ばした。

 そしてしばらく飛ぶと、遠くに豪華客船が見えてきた。
 だからデビルは、あの船を見に行ったんだろうと、ぼくらはすぐに分かった。

 それから船の上空に近づき、しばらくそこを旋回した。
 だけど周囲を見回しても、上空にテビルの乗ったソラデンはなく、それで茶トラ先生自慢の高性能双眼鏡で上空から船を隅から隅まで観察すると、船のデッキの隅っこに、ソラデンが停めてあるのが分かった。

 それで、船のデッキに降りても良かったのだけど、空飛ぶスワンボートなどどいう豪快なものがデッキに降りようものなら、船は大騒ぎになるのは目に見えていたから、とりあえず誰もいなさそうなデッキの隅っこにささっとスワンボートを寄せて、ぼくだけがぴょんと船に飛び降り、茶トラ先生の乗ったスワンボートはただちに上昇し、上空で待機した。

 それからぼくは船の中をさまよった。
 ぼくは豪華客船なんて、初めて見るし初めて乗った。

 デッキから船の中へ入ると、そこは豪華なホテルみたいな、何階建てにもなった、そして大きな街みたいな凄い場所だった。
 豪華な内装や飾り付け、上等そうな家具、そしてたくさんの立派な服を着た人々が行き交い、ぼくだけは普通の子供の格好。

 でもほかにもぼくみたいに普通の子供の格好をした子もいたから、ぼくだけが周りの人がじろじろと見られるようなこともなかった。

 だけどそれから、船内をぐるぐる見て回ってもデビルは見つからず、それでぼくは、またデッキに出てうろうろしていたら、操舵室(船長のいるところ)の入口付近で何やらもめごとが起こっているようだった。

 それでぼくが近づいて見てみると、何とデビルと、そして船長さんという感じの人が、言い争っているようだった。

「この船、バラスト水が足りないんじゃないのか?」
 デビルの声だ。

「君は子供のくせに、何を分かったようなことを言ってるんだ!」
 船長も応戦していた。

「この船の喫水線が下がっているんだ。この船は、図鑑で見てるからよく知ってるよ」
「そりゃどうも」
「船長さん、これ本当だぞ! で、このままじゃ船は不安定なんだ。だからこのままじゃ、この船、ヤバイぞ!」
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