ゆりちゃんを救う

文字数 1,842文字

 そしてぼくらが、お菓子とか花とか買ってから行ってみると、ゆりちゃんはその病院のICUとかいうところにいた。
 そしてぼくらは結局ゆりちゃんには会えず、看護師さんがちょっと深刻そうな顔でゲシュタルト先生に、ゆりちゃんは今は面会できないと説明した。

 それからぼくらはまた道場へもどり、仕方がないので、お菓子を山分けしてから解散となり、それからぼくの分のお菓子を持って茶トラ先生のところへもどり、タイムエイジマシンで元の時間へともどった。
 つまり、少なくとも1年後のゆりちゃんは、病院に入院していて、しかも面会も出来ないような状態だったということなんだ。

 それでぼくはタイムエイジマシンから出ると、早速未来から持って帰ったお菓子をみんなで食べながら、そのことをデビルと茶トラ先生に話した。

 二人とも、とても驚いていた。
 そしてぼくは、デビルの勘はすごいと思った。
 ともかく、これは何とかしなければ!

 それから茶トラ先生は、ともかく一度ゆりちゃんを、先生の実験室へ連れてくるようにとか言い出した。
 ゆりちゃんを連れてきてどうするのか、ぼくにはさっぱり分からなかったけれど、ともかく茶トラ先生には何か秘策があるみたいだった。
 つまり、「ゆりちゃんを救う方法は、ないわけではない」らしかったんだ。

 だけど問題は、ゆりちゃんをどうやって連れ出すかだ。
 多分ゆりちゃんはデビルを思い切り避けているだろうし、それにぼくはデビルと連んでいると思われているだろうし…

 でもひとつだけ、ゆりちゃんと茶トラ先生には接点があった。
 それはゲシュタルト先生だ!

 ゲシュタルト先生はゆりちゃんの空手の恩師だし、茶トラ先生とゲシュタルト先生は五十年来の友人だ。
 そういうわけで、空手の練習のときにゲシュタルト先生に頼んで、ゆりちゃんを茶トラ先生の実験室へ行くようにと言ってもらうことにしたんだ。

 ええと、少し話が少々ややこしいけれど、このときはまだゆりちゃんは入院していないんだ。
 だって発病前だから。

 それで、ゲシュタルト先生にその話をされたゆりちゃんは「でも、どうしてですか?」とか言ったけれど、ゲシュタルト先生は誰かさんみたいに「いいからいいから」とだけ言い、するとゆりちゃんは魔法でもかけられたように「わ…、わかりました」と言って、それから数日後、ゆりちゃんは茶トラ先生の実験室を訪れることになった。

 ええと、これまた余分な話だけど、以前のデビルとの決闘の話のとき、茶トラ先生はぼくを思い切りあやつって、ゲシュタルト先生の所へと行かせた。
 それで、後で考えたのだけど、茶トラ先生とゲシュタルト先生には、「人をあやつる」という共通の才能があるみたいだ。
 どうしてなのか、今でも分からないけれど…

 ええと、それでゆりちゃんが茶トラ先生の実験室を訪れる日、ださいケイタイ風無線機でぶーと連絡があり、ゆりちゃんを茶トラ先生のところまで案内するように言われた。
 茶トラ先生も、女の子と二人きりは気まずかったみたい。
 つまり先生はシャイなのだ。

 それからデビルは遠慮して来なかった。
 運動会でぶったたかれたのが、少々トラウマになっていたみたいだけど、まあそれはいい。

 だけどデビルはゆりちゃんのことをとても心配していたし、だからぼくは、デビルには定期的に、ゆりちゃんの状況を報告することにしていた。

 さて、それから茶トラ先生の実験室で、やってきたゆりちゃんに、茶トラ先生は「ただちにタイムエイジマシンに入るように!」と言った。

 するとゆりちゃんはまたまた「どうしてですか?」と言ったけれど、茶トラ先生が十八番の「いいからいいから」と言って、そしてそれはゲシュタルト先生ばりの、人をあやつるような言い方だったので(ぼくはいつもそうやってあやつられているし…)それで、ゆりちゃんは、とにかくそれにあやつられるように、タイムエイジマシンのカーテンを開け、中へ入った。

 そして茶トラ先生に促され、ぼくは「ぼくもおじゃましますよ~♪」と言って、そしてぼくもいっしょにタイムエイジマシンに入った。
 ゆりちゃんは少しだけ嫌そうだったけれど…

 それから外では茶トラ先生が「6ヵ月後が適切であろう」とか言って、それで6カ月と設定しているようだった。
 そしてタイムエイジマシンが動き出し、ぼくらはちょうどその6ヵ月後の未来へと向かった。

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