デビル、船のカジノへ

文字数 1,826文字

 ぼくにも茶トラ先生にも、デビルが何を企てていたのかすぐに分かったので、ぼくらは速攻でスワンボートへ舞い戻り、スワンボートを3人で必死にこいで、あっという間に茶トラ先生の実験室へ戻り、ぼくとデビルは防護服を着てタイムエイジマシンに入り、どうせならとデビルのお父さんと同じ38歳になり、それから例の紅白のスーツに着替え、スワンボートでまたぶっ飛んで船へ戻り、それからデビルとぼくは、船長さんに38歳の姿を見せた。

 船長さんはぼくらを見るなりぽかんとしてしばらく固まっていたが、それから、「いいい、いつの間にそんな永い時が過ぎたのか…」とか言ってから、「それじゃ…、かか、カジノへ行って来るがよい」と言ってくれた。

「しかし速攻で防護服が役に立つとはな」
「タイムとエイジが連動してても、こうやって歳だけを変えられるようになって良かったよね」
「だいたい未成年じゃカジノ入れねえからな」

 それでぼくらは早速、船のカジノへと向かった。
 そもそもデビルは本質的には「悪がき」だったから、ゲームセンターなんかでは帝王として君臨していたらしいし、だからカジノへ行けば…

 それから、茶トラ先生は茶トラガウン、ぼくは赤の、そしてデビルは白のスーツを着て、豪華な船内を歩き、そのカジノへと向かった。
 とにかくそこはすごい豪華で、テレビで見たラスベガスみたい。
 もちろんデビルは目を輝かせ、
「おれ、ルーレット大得意だぜ!」とか言って、ルーレットのテーブルに付いた。

 ちなみにスワンボートで一度実験室へ帰った時、茶トラ先生は少々のドル札を持ってきていたので、早速これを元手にデビルはゲームを始めたんだ。
 例によって茶トラ先生は手際がいい。

 そしてぼくと茶トラ先生は、ルーレットなんてきっと下手くそだから、茶トラ先生はノンアルコールビールを買い、ぼくはジュースを買ってもらって、椅子に座ってデビルの様子を見ていた。

 それからデビルはしばらく、とても鋭い目でルーレットをじーっと観て、それからややあって、「よし!」と気合を入れてから、ある一つの数字に10ドルを賭けた。

 そしてディーラーがルーレットを回し、すると何と、球はデビルの賭けた数字の上でぴたりと止まった。

「やったぜ! 35倍だ!」
 デビルが言うように、10ドルは350ドルになったんだ。

 それからデビルは、またまた鋭い目でルーレットをじーっと見て、「これだ!」と言ってから、その350ドル全部を、また一つの数字に賭けた。

 それでディーラーがルーレットを回すと、またまた球はデビルの賭けた数字でぴたりと止まった。
 つまり350ドルの35倍。つまり12250ドルだ。

 それからデビルはまたしてもルーレットをじーっと観て、「よっしゃ!」と豪快に気合を入れてから、またまた一つの数字に賭け、ディーラーはけげんな顔をしながらルーレットを回すと、またまた球はその数字でぴたりと止まった! 
 それで、

  12250×35=何と約43万ドル!

 そしていつのまにか、他の乗客たちもデビルの周りに集まり、わいわいとすごく盛り上がっていた。

 それからデビルは、何とその43万ドルを全部、またしても一つの数字に賭け、そしてまた当たった。

 これで43万ドルの35倍=約1500万ドル!
 約15億円

 周りの人々からどよめきと歓声が上がった。
 それからデビるがその15億円を、またしても一つの数字に賭けようとしたら、ティーラーが待ったをかけた。

「あ~、もしや君は、何か不正でも…」
 だけどデビルは吠えた。

「やいやい! じょうだんじゃね~よ。おれは超能力者なんだ! だからおれは完璧に未来が予測できる。そしておれは予測している。この船は明日、嵐で沈没するんだ!」

 すると乗客たちの間で悲鳴が上がり、その場はてんやわんやの大騒ぎとなり、いつのまにか船長もとことことやってきて、それからディーラーがデビルの恐ろしい予知能力のいきさつについて、しっかりと説明をした。

 すると船長は、
「どうやら君が超能力者だということはよく分かった。なんたって、あっという間に子供から大人まで変身してみたり、ルーレットの結果を予測したり…、つまり君は預言者であり、同時に、魔法使いなんだな。分かったよ。君には敵わない。あ~、早速バラスト水と喫水線のチェックをしよう。それと、これから最寄りの港へ入り、低気圧の通過を待つことにしよう」

 豪華客船SOS 完
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