過去へ行こうぜ!

文字数 1,346文字

「過去? 行けることは行けるけど、過去は…」

 それでぼくは、その過去について、茶トラ先生が数日前の過去へ行って、ベッドでぐーぐー寝ている自分をバットで殴り殺そうとした話をなぜか思い出したので、その話をした。
 それは、茶トラ先生自身を殴り殺すバットがなかなか付からなかった話や、何かにつまづいて、なかなか自分に近づけなかった話や…

「茶トラ先生の話では、要するに過去へ行っても、何も出来ないんだってさ。それは過去がすでに決まっているからで、それでたとえ過去へ行って何かをやったとしたら、場合によっては歴史が変わってしまい、とんでもないことになるんだってさ。暗殺された歴史上の重要な人物を救ったら、世界がどうなったか、みたいな…」
「へえー、そうなんだ。よくわかんねえ! だけどおれ、一度過去へ行ってみてえんだ。わかんねえけど、過去で何も出来なくたってかまわねえからさ。それにそんな世界って面白そうじゃん。考えてみるとわくわくするぜ。だから一度行ってみてえな。どんな世界か様子を見て、やばかったら速攻で帰ってきたらいいからさ」
「う~ん。言われてみればたしかにおもしろいかもね。なんだかぼくも過去へ行きたくなっちゃったかな」
「だろう?」
「まあ、そんなにお前さんたちが行きたいのなら、一度過去へ行ってみるのもよかろう。たしかに過去は興味深いものだ。ただし決して過去において、軽率なことはやってはならん。くれぐれも回りに影響を与えるようなことはするな。さもないと歴史が…」
「分かってる分かってる。ええと、過去へ行ったとしても、ぼくら、絶対にへんなことはしないよ。絶対に茶トラ先生を殺したりもしないから、安心しなよ」

 それでぼくとデビルは「お試しに」と、タイムエイジマシンで過去へ行ってみることにした。
 それから、デビルと二人でタイムエイジマシンへ入り、カーテンを閉め、茶トラ先生の「くれぐれも過去へ影響を与えるな!」という、念を押すような声を背中で聞き、それでぼくらはマシンの中から「は~い」と答えた。

 そして、どれくらい前にしようかというという話になり、デビルが「それじゃぁアバウトに一ヶ月前」と言ったので、ぼくが「どうして?」というと、デビルは「アバウト!」と言って、それで何となくぼくらはアバウトに、一ヶ月前へ行ってみることにした。

 ところがぼくはタイムエイジマシンのリモコンの操作をしているとき、本当は一ヶ月前と入力するところを、間違えて一年前としてしまい、だけど「ま、いっか♪」と軽く考えてから、そのままポンとスタートボタンを押した。

 すると一応マシンはスタートしたけれど、しばらくすると突然ガタガタという激しい音がして、それにマシンはぐらぐらと揺れ始め、しかもマシンのアラームも鳴りはじめ…、と思ったら、突然マシンがどしゃんと横倒しになってから止まった。

 マシンの中にある鏡は割れ、カーテンはぼろぼろに破れ、赤と青のランプは衝撃で外れたのか、いつのまにかなくなっていた。

 それから横倒しになったマシンから二人とも必死ではい出して、そして辺りを見ると、そこは茶トラ先生の実験室ではなく、大きなゴミ置き場のような場所で、周囲にはたくさんのエアコンやテレビや、とにかくいろんな粗大ゴミがすててあった。

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