6ヶ月後へ

文字数 1,444文字

 前にも言ったように、なぜかタイムマシンとエイジマシンは連動してしまっているので、6カ月後へ行くと、ぼくらの体が勝手に、6カ月後の状態になってしまう。
 これはエイジマシンの作用だ。
 そして茶トラ先生のねらいは、ゆりちゃんの6カ月後の状態を見て、どんな病気になろうとしているのかを見定めようということらしかったんだ。

 それから6カ月後でマシンが止まったのだけど、鏡に映ったゆりちゃんの顔色が少し悪いような気がした。
 それにゆりちゃんも「少しめまいがするかも」とか言い出したし。

 それからぼくらがタイムエイジマシンの外に出ると、そこは一見、いつもの茶トラ先生の実験室なのだけど、なぜか妙に小奇麗で、ちょっと診察室みたいな雰囲気で、しかも何故か茶トラ先生が、いつものよれよれではなく、ぱりっとした白衣姿でぼくらを待ち構えたいた。

「あれれ、茶トラ先生、何だかお医者さんみたい。立派な白衣なんか着ちゃって。で、ここは…」
「実はわしは、この6ヶ月でややこしい手続きをいろいろとやり、保健所に申請をし、そしてここを内科医院として登録したのだ。『茶虎内科医院』という。つまりわしは医院を開業したのだ」
「開業? だけど患者さんは?」
「患者さんは今、わしの目の前におる」
「そうか! ゆりちゃん」
「そうだ。ところでゆりちゃん、気分はどうかね?」
「さっきこの機械に入ってから、急に体がけだるくなって、少しめまいもするみたいです」
「それはいけない。それじゃさっそく採血をしよう。大丈夫。わしは医者で、ここは茶虎内科医院というところなんだ」

 たしかに見渡すと、茶トラ先生の実験室には採血するときの腕を乗せる台や、注射器なんかもあり、血液を調べる機械なんかもいっぱいあったし、立派な、のぞくところの二つある顕微鏡も置いてあった。

 そしてさっそく茶トラ先生は、ゆりちゃんから器用に採血をして、それを機械に流し込んだ。
 すると機械がかちゃかちゃと動き出した。

 そしてしばらくすると機械が止まり、プリントアウトされた紙がするすると出てきた。
 きっと検査の結果だ。

 そしてそれを見た茶トラ先生は「おや、白血球が…」なんて言ってから、少しだけ険しい顔になった。
 それから茶トラ先生は採血したゆりちゃんの血液の残りを、顕微鏡のプレパラートに一滴落とし、染色するといってインクのような薬液をかけ、カバーグラスを付けてから、ゆりちゃんの血液のサンプルを顕微鏡で観察し始めた。

 茶トラ先生は、タイムエイジマシンなんかも作れるような大物理学者なんだけど、結構立派なお医者さんなんだと、ぼくは妙に感心した。

 それから茶トラ先生は、延々と顕微鏡をのぞいていた。
 もう根性で見まくっているって感じだった。
 そしてしばらくして、茶トラ先生の顔がいっそう険しくなった。
 いや、愕然とした表情になったんだ。

 それでぼくはとても心配になり、ゆりちゃんもとても不安そうだった。
 そして顕微鏡から顔を上げると、茶トラ先生はこう言った。

「おそらくこれは、急性骨髄性白血病という病気だ。だが幸い、ごく早い段階だ。即ち、白血病の細胞はごくごく少数だ。わしが延々と探して、やっと見つかったほどだ。そして今から6カ月前なら、さらに初期の状態と言えるだろう。だから、これからただちに6カ月前へ戻って病院へ行くことだ。血液データと白血病細胞の写真といっしょに、紹介状を書いてあげるから…」

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