京都へ
文字数 1,202文字
それでぼくは、それからてくてくと駅まで歩いた。
いったい、この世界でシカトされているぼくは電車に乗れるのかな? なんて思ったけれど、改札でも駅員に(幸い)思い切りシカトされたので、電車にはしれっと乗ることが出来た。
しかもぼくはこの世界ではお腹も減らない、のども渇かない、トイレも不要。
だから弁当もジュースも買わず、延々と電車に乗った。
考えてみるとすごく便利な世界ではある。
それから途中で新幹線に乗り換え、どうせならと、グリーン車へ行き、空いている席に豪快に座った。
その間、車掌さんは何度も通路を通ったけれど、全くぼくをシカト、というか思い切り無視するので、すっとそのままぼくは、優雅にグリーン車の座席に座っていた。
だけど途中の駅で、誰かがぼくの座っている席に座ろうとしたので、ぼくはあわてて立ち上がり、席を譲った。それからほかの空いている席に座った。
そしてぼくは京都駅で降りた。
人に聞いてもどうせシカトされて教えてもらえないし、それで駅前の案内板なんかや、とにかくいろいろ見て、その大学の場所を調べ、それからぼくは京都の街をてくてくと歩いた。
そこは近代的な街で、しかも古いお寺なんかもいっぱいある。
独特の雰囲気の街だ。
それで、きっとぼくはこの世界から除外されている、あるいは無視されているのだろうけれど、この世界ではお腹が減らないばかりか、いくら歩いても全く疲れない。
だからそれはかえってありがたいことだと、そのときぼくはそう考えることにした。
それから延々と鴨川沿いを歩き、するとたくさんの木々が生い茂っている、いかにも伝統のありそうな、大きな大学が見え、しばらく歩いてその大学の正門前に着いた。
その正門から入ると、見上げるような大きな時計台があり、その手前にくすのきが茂り、それを囲んで、コンクリートで出来た座れるような場所もあり、たくさんの人が座っていたので、空いている場所を見付け、ぼくもそこに座った。
周りじゅういたるところに木が生い茂り、森の中に大学があるという感じで、そしてたくさんの学生さんや先生らしい人が、忙しそうに周囲を歩いていた。
それでぼくはそこに延々と座ることに決めた。
お腹は減らないし疲れないし、夜も眠くならないし、しかも時間が知りたければ、振り返って時計台を見上げれば分かるし。
それからぼくが延々とそこに座り、それで何日かが過ぎ、そしてある日の昼ごろ、とうとう茶トラ先生らしい人が通りかかっているのを見つけた。
だけどずいぶん若い!
いやいや、それは当たり前だけど…、だけどぼくは思った。
(あの人こそ、若き日の茶トラ先生だ!)
そしてぼくはそう思い、とっさに、
「お~~い、茶トラ先生!」と呼んでみた。
(どうかぼくをシカトしないで…)
するとその人はぼくの方を見て、それからぼくの所へ歩み寄った。
「君は…、君はぼくの名前を知っているのかい?」
いったい、この世界でシカトされているぼくは電車に乗れるのかな? なんて思ったけれど、改札でも駅員に(幸い)思い切りシカトされたので、電車にはしれっと乗ることが出来た。
しかもぼくはこの世界ではお腹も減らない、のども渇かない、トイレも不要。
だから弁当もジュースも買わず、延々と電車に乗った。
考えてみるとすごく便利な世界ではある。
それから途中で新幹線に乗り換え、どうせならと、グリーン車へ行き、空いている席に豪快に座った。
その間、車掌さんは何度も通路を通ったけれど、全くぼくをシカト、というか思い切り無視するので、すっとそのままぼくは、優雅にグリーン車の座席に座っていた。
だけど途中の駅で、誰かがぼくの座っている席に座ろうとしたので、ぼくはあわてて立ち上がり、席を譲った。それからほかの空いている席に座った。
そしてぼくは京都駅で降りた。
人に聞いてもどうせシカトされて教えてもらえないし、それで駅前の案内板なんかや、とにかくいろいろ見て、その大学の場所を調べ、それからぼくは京都の街をてくてくと歩いた。
そこは近代的な街で、しかも古いお寺なんかもいっぱいある。
独特の雰囲気の街だ。
それで、きっとぼくはこの世界から除外されている、あるいは無視されているのだろうけれど、この世界ではお腹が減らないばかりか、いくら歩いても全く疲れない。
だからそれはかえってありがたいことだと、そのときぼくはそう考えることにした。
それから延々と鴨川沿いを歩き、するとたくさんの木々が生い茂っている、いかにも伝統のありそうな、大きな大学が見え、しばらく歩いてその大学の正門前に着いた。
その正門から入ると、見上げるような大きな時計台があり、その手前にくすのきが茂り、それを囲んで、コンクリートで出来た座れるような場所もあり、たくさんの人が座っていたので、空いている場所を見付け、ぼくもそこに座った。
周りじゅういたるところに木が生い茂り、森の中に大学があるという感じで、そしてたくさんの学生さんや先生らしい人が、忙しそうに周囲を歩いていた。
それでぼくはそこに延々と座ることに決めた。
お腹は減らないし疲れないし、夜も眠くならないし、しかも時間が知りたければ、振り返って時計台を見上げれば分かるし。
それからぼくが延々とそこに座り、それで何日かが過ぎ、そしてある日の昼ごろ、とうとう茶トラ先生らしい人が通りかかっているのを見つけた。
だけどずいぶん若い!
いやいや、それは当たり前だけど…、だけどぼくは思った。
(あの人こそ、若き日の茶トラ先生だ!)
そしてぼくはそう思い、とっさに、
「お~~い、茶トラ先生!」と呼んでみた。
(どうかぼくをシカトしないで…)
するとその人はぼくの方を見て、それからぼくの所へ歩み寄った。
「君は…、君はぼくの名前を知っているのかい?」
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