タイムマシン

文字数 2,181文字

「そうだ! つまりこれは、あ~、タイムマシンと、そしてエイジマシンが一緒になったもので、だから合わせてタイムエイジマシンと、わしは呼んでおるのだ」
「そうか! タイムエイジマシン…、だけどそりゃまたえらいものを発明したもんだよねえ」
「だからわしはぶったまげると、さっきわしはお前さんに明確に言ったぞ。これで過去にも未来にも行くことができるし、歳だっていくつにもなれる」
「わ~お!」
「それでだ。実は、あ~、ここでおまえさんに、少しばかりタイムトラベルの話をせねばならんのだ」
「タイムトラベル?」
「そうだ。タイムマシンはタイムトラベル…つまり時間を旅する機械だ」
「そうだよね。それってかっこいいじゃん」
「まあかっこいいのはさておいて、それで、エイジマシンの方は見てのとおりで良いのだが、タイムマシンの方は、それを使うに当たり、少しばかり気を付けなければならないことがある」
「どんなこと?」
「それはだな、『タイムパラドックス』という奇妙な現象なんだ」
「タイムパラドックス?」
「こんなことを考えてみろ。例えば数日前、わしがベッドでぐうぐう寝ておるところへ、タイムマシンで戻る。そして寝ているわしをバットで殴り殺すんだ。そうすると、どうなると思う?」
「れれれ? どうなるの?」
「わしは今ごろ棺おけの中だ。で、わしが棺おけからもぞもぞと抜け出してタイムマシンに入り、過去へ戻り、そしてわしをバットで殴れるか?」
「それって…、まるでゾンビじゃん!」
「実際わしは数日前に戻って、実際にそれを試みた」
「え~!」
「いやいや、実際にやったわけではない。あくまでも実験だ」
「そうなの」
「だが置いてあったはずのバットがなかなか見つからなかったり、わしに近づこうとしても、何かにつまずいてころびそうになったりして、とにかく、どうしてもうまくいかんかったのだ」
「へぇ~」
「とにかく過去へ戻ると不思議なことにだな、結果的に何も出来んのだ。そこは何だか不気味で気色の悪い世界だった」
「それってゆうれいみたいだね」
「たしかにそうだな。そこでわしは考えたのだが、もしそうでないと過去へ行っていろんな行動をとることで、『現在』が変わってしまうのだから、場合によってはとんでもないことになりかねんのだ」
「とんでもないことになりかねん?」
「例えば歴史的に重要な人物を暗殺したり、あるいは、暗殺された人を救ったりしたら、歴史が大きく変わって、世界が一変してしまうかもしれんだろう」
「う~ん。なるほどねえ」
「だからそうならんために、自然はわしらが過去に一切影響できぬよう、何らかの歯止めを掛けておるのかもしれんと、わしは考えるに至ったのだ」
「わしが考えるに至った? で、歯止?」
「そうだ。つまりそういう歯止めがあるらしいのだ」
「へぇー、つまり過去を変えないようにするための歯止めかぁ。じゃ、未来は?」
「ところが未来はそうではなかったんだ。未来へ行けば普通に行動できるんだ!」
「へぇ~」
「これもわしが考えたのだが、その理由は、未来はまだ決まっていないというところにある」
「未来は決まっていないの?」
「そうだ。まだ決まってないんだ。だから未来で何かをやると、まだ決まっていない、未来の予定が変わるだけだ。そして良いことをすれば良い未来が、悪いことをすれば悪い未来がやってくるはずだ」
「へぇ~。そうなんだ」
「だからお前さんも、すばらしい未来のために、これからは、あ~、ずっと良い行いを…」
「あ、そうだ! えっと、何もしなくてただ見るだけだったら未来は変わらないよね」
「話の腰をおるでない。まあ、多分そうだろうな。全く何もしなければ…」
「じゃあ早速、その未来へ行こうよ。そうだ! 甲子園の優勝校が見たい。見るだけだよ。見るだけなら、未来は変わらないんだろう?」
「おそらくな。見るだけならな」
「実は今、学年全体の男子でどこが優勝するか賭けているんだ」
「お前ら、そんな事をしておるのか!」
「いやいや、お金じゃないよ。じゅじゅ、ジュースだよ。ジュースをおごるんだ。(っていうことにしとこう…)で、学年の誰が言い出したか分からないんだけど、今、学年ではそのことでとても盛り上がっているんだ」
 
 実はぼく、デビルから金を脅されている。
 だから甲子園の優勝校を当てて、一もうけするのも悪くはない。
 一瞬ぼくは、そういうことを考えたんだ。
 あまり良くない考えだけど…

「まあジュース一杯くらいならいいが。だが高校野球というのは、彼らの全力プレーを見て、わしらは感動するものなのだ」
「うん。分かってるよ」
「あ~、だからジュースなんかを賭けるような対象にしてはいけないんだ。分かるか?」
「うんうん。それもよく分かるよ」
「わかっておるならまあいいが」
「ええと、それじゃ決勝戦予定の、八月二十三日あたり…、だけど甲子園は雨天中止もあるから、一日余裕をもって八月二十四日にしようよ」
「本当にお前さんは、分かっておるのか?」
「うんうん!」
「まあいい。わしもそれを全く知りたくないというわけではない」
「何か、ややこしい言い方だね」
「人のしゃべり方にケチを付けるな」
「は~い」
「それじゃ、ちょっと未来をのぞいてくるだけだぞ」
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