茶トラ先生との出会い

文字数 1,088文字

 そのとき茶トラ先生は、よれよれの白衣姿で、庭で何かの科学実験をしているようだった。

 そしてぼくが困り果てて道に座り込んでいると、それを目ざとく見つけ、よれよれの白衣姿のまま、のそのそと庭から出てきて、
「おやおや、この自転車は絶望的だね」と、やけに嬉しそうにそう言うと、ぼくの自転車を庭に引きずり込もうとした。

 だけどその前に、茶トラ先生はぼくの自転車の前の車輪にべっとりと着いていた(デビルの奴が着けた!)犬のくそを、これまた目ざとく見付けると、またのそのそと庭へもどり、それからガスボンベのような不思議な物体を持ってきて、
「この中の液体は、どんな細菌もウイルスも完全に消毒することが出来るんだ!」とか言ってから、ぼくの自転車の前輪をきれいに消毒してくれ、それからあらためてぼくの自転車を庭へ引きずり込み、そしていろんな道具を使い、一瞬にして修理してしまった。

 それだけではない。なんと内装八段変速に魔改造もしてくれたんだ。
 これで坂道もすいすいだし、スピードもばっちりだ。

 とにかく、それを見たぼくは目が点になっていた。
 もう、ものすごい人だと思った。

 そういうわけで、ぼくは「すごい!」と思うやら、感謝したいやら、複雑な気持ちが入り乱れ、で、頭が真っ白になって腰が抜けそうになって、その場にぽかんとつっ立っていた。

 そしたら茶トラ先生が「今度はお前さんが恩返をする番だぞ!」とか言って、それからぼくは小一時間、ばっちり先生の科学実験を手伝わされた。
 だけどそれが一体どんな実験だったのか、ぼくはさっぱり覚えていない。


 ともかくそういうことがあって以来、ぼくは茶トラ先生と親友になった。
 そして先生の家へ、時々遊びに行くようにもなったんだ。

 茶トラ先生はぼくにいろんな事を教えてくれたし、いろんな珍しい機械も見せてくれた。
 そもそも茶トラ先生の家の中って、家というよりは、「実験室」そのもので、そこにいろんなわけのわからない、とにかくもうガラクタのような機械が所狭しと並んでいたんだ。

 そして茶トラ先生はしばしば「すごい機械を発明したからただちに見に来ないか!」とか言って、ぼくに「緊急連絡」をしてきた。
 どういう方法で連絡するかは後で話すけど。

 だけどそれらはいつも「頭脳透視装置」とかなんとかいう、とにかくわけの分からない、はっきり言って、そのときのぼくにとっては、どうしようもないようなガラクタばかりだった。

 だけどそれからしばらくしたある日、とうとう茶トラ先生は、本当にものすごいものを発明したんだ。
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