今度はヤス子ちゃんの相談事

文字数 1,116文字

 ある日の学校での昼休み、突然ヤス子ちゃんがぼくのところへ来て、突然、こんなことを言った。

「ねえイチロウ君、ええと、茶トラ先生にうちの猫、診てもらえないかなあ」
「猫を? だって茶トラ先生は物理学者で…」
「知ってるよ。だけどあの先生、見たらすぐ分かるけどさあ、見かけはああだけど、本当はぶったまげるような、とんでもない天才だよ」
「茶トラ先生がとんでもない人物だってことは良く知っているよ。いろんな意味でね。で、ヤス子ちゃんちの猫がどうしたの?」
「死にそうなのよ」
「え!」
「お腹にものすごいできものが出来て、それで獣医さんに連れて行ったら『乳がんで、もう施しようがない』と言われたのよ。だけどずっと飼ってるし、とてもかわいいし、だから何とか救ってあげたいの」
「でも、茶トラ先生は…」

 だけどあんまりぼくがごちゃごちゃいうとヤス子ちゃんにぶん殴られそうで怖かったし、それでぼくはヤス子ちゃんと、ヤス子ちゃんちの猫のぴゃーちゃんを連れて、もちろんケイタイ無線機で「行くよ」と連絡してから先生のところへ行った。

「わしは獣医ではない! いくらなんでも猫は…」
「茶トラ先生! ヤス子ちゃんに頼られてるんだぜ。何とかしてやんなよ!」
「そう言われてもなあ…」

 それから茶トラ先生はしぶしぶ、そのぴゃーちゃんを、シャーシャー言わせながら、2,3発猫パンチも食らいながら「診察」し、そして茶トラ先生は、

「これは末期の乳がんだろう。わしは物理学者だが、なおかつ人間の医者でもあるから、猫の病気も全く分からんわけではない」
「ほらまた茶トラ先生、そんなまわりくどい…」
「いいからいいからイチロウ君! 茶トラ先生の話、黙って聞いてなよ。あまりうるさいとぶんなぐるわよ!」
「は~い」
「えへん。それで、わしも多少は知っておるが、猫の乳がんは大変予後が悪い」
「ヨゴって?」
「治すことは難しいのだ。だからこの仔は、残念ながらあと数ヶ月というところだろう」
「それじゃ茶トラ先生、やっぱりこの仔は助からないのですか?」
「ねえ、タイムエイジマシンで未来へ連れて行けば?」
「お前さんの言うように、例えば五十年後の未来へ連れて行ったとする。たしかに五十年後の獣医学は今よりも進んでおるだろう。しかしタイムとエイジが連動しておる以上、この仔を、例えば五十年後へ連れて行ったとしても…」
「そうだよね。五十年後の茶トラ先生みたいに、骨に…」
「わしはあまりその話は考えたくないのだが」
「ああ、そうだったね。ごめん。で、どうするの?」
「それで、う~ん。タイムマシンだけを作動させて、エイジマシンを無効にする方法を考えれば、この仔を助けることも…」
「ないわけではない?」
「考えてみるとするか」
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