そしてミッション実行
文字数 2,543文字
さっそくその翌日、ぼくとデビルは学校で、ゆりちゃんにその話をした。
そしてゆりちゃんはすぐにヤス子ちゃんを呼び、もちろんタイムエイジマシンのことや、チャトラやアポフィスの衝突なんかの話も、全部したけれど、ヤス子ちゃんは、「ふーん」とだけ言って、全く信じてないみたいだった。
だけど、「私、自転車得意だから、スワンボートをこぐのだったらまかせといて!」と、力強く言ってくれたので、ぼくらは安心した。
そしていよいよチャトラ接近の日の夕方、茶トラ先生の実験室に、ぼくとデビルとゆりちゃんと、そしてヤス子ちゃんの全員が集合した。
見てみると、スワンボートの白鳥の蝶ネクタイの辺りには大きな座布団が付けられていて、茶トラ先生は、これはチャトラを押すためだと言っていた。
それからいよいよ日が暮れて、みんなでスワンボートに乗り込んだ。
茶トラ先生が機長席、ぼくが副操縦席。そしてデビルが後ろの真ん中。
そしてその両側に、ゆりちゃんとヤス子ちゃんが座った。
両手に花のデビルは、でれでれと、もう幸せいっぱいの顔をしていた。
それから、みんなでゆっくりとペダルをこぐと、スワンボートはぐんぐんと上昇した。
全く話を信じていなかったヤス子ちゃんは、
「うわ~~~、なになになにこれなになになに~~~ぎゃ~~~~~~!」と叫んだ。
どうやらスワンボートがのろのろと道路を走って、その辺を一回りするだけだと思っているようだった。
だけどデビルが、「だからおれが言ったとおりだろが!」というと、ヤス子ちゃんは「ひえ~、あれって全部まぢだったのね!」とぶったまげていた。
さてそれから、みんなでこいだから、スワンボートは速攻で衛星軌道に達し、それからさらに加速して第二宇宙速度…、つまり地球の引力を振り切る毎秒11.2キロに達し、さらに加速して、地球から遠ざかり始めた。
窓から見るとすごい星空で、一方、青い地球はどんどん小さくなり、やがてスイカくらいの大きさになった。
ペダルをこぎながら、みんなは外の宇宙の景色に見入り、歓声があがった。
一方、茶トラ先生はコックピットにナビゲーションみたいなものを持ち込んでいて、かりかりした雰囲気で慎重に操縦かんを操作し、ボートをチャトラへと誘導しているようだった。
そして茶トラ先生が「みんな、思い切りこぐんだ」と言うと、ヤス子ちゃんをはじめ、みんなで力を合わせて、全力でこいだ。
とくにヤス子ちゃんは「まかせといて!」といってから、顔を真っ赤にして、必死でこいでくれているようだった。
ちなみにデビルも、ゆりちゃんの隣で顔を真っ赤にして、必死でこいでくれていた。
とにかくみんなで力を合わせ、スワンボートはぐんぐんと加速していったのだ。
それからしばらくすると、はるかか彼方に、それはそれは小さな「石ころ」みたいな物体が見え、そしてそれがぐんぐん近づいてきた。
「よし! みんなのおかげで小惑星チャトラが視界に入ってきたぞ!」
茶トラ先生は興奮気味にそう言った。
みんなの力で、チャトラに追いつくのに必要な速度が出せたのだ。
そしてさらに近づくと、実際は結構大きな石ころ…、どころではなく、それはやっぱり小惑星だ。
灰色でごつごつした形で、予想通り、ちょっとしたビルくらいの大きさだった。
茶トラ先生もぼくらもみんな、初めて目の前に宇宙の小惑星を見て、とてもに感動した。
ヤス子ちゃんはうっすらと目に涙を浮かべていた。
それから茶トラ先生が上手にスワンボートを誘導し、白鳥の蝶ネクタイ辺りに付けられた大きな座布団が、ゆっくりとチャトラに触れ、ぐしゃりとつぶれた。
「チャトラにドッキング成功!」
茶トラ先生は言った。
「やったやった~!」
それでみんなで拍手した。
それから茶トラ先生は再びみんなに、「全力でこげ」と言ったので、みんなで歯を食いしばって、力をふりしぼって、ずっとペダルをこぎ続けた。
どうやらこれでスワンボートがチャトラを押しているみたいで、蝶ネクタイに付いた座布団はもうぺったんこにつぶれていた。
それからみんなでずっとこいで、そして茶トラ先生がチャトラの軌道をコックピットのナビゲーションで計算しているようだったが、最後に茶トラ先生はこう言った。
「みんな本当によくやってくれた。これで無事、チャトラの軌道は変更された。もはや50年後のアポフィスへの衝突は回避されるであろう」
「うわー、良かった良かった! で、チャトラはこれからどうなるの?」
「軌道がわずかに変わっただけだ。だから50年後にまた地球へ近づく。もちろんそのときアポフィスをかすめはするが、衝突はしない。もちろん地球にも衝突しないだろう。そして、このミッションは、ヤス子ちゃんの力なしには決して達成できなかった」
「うふふふふ、そう言われると私、てれるぢゃない!」
「ヤス子ちゃん、本当にでかしたぞ。がんばったかいがあったじゃねえか!」
「やったね。ヤス子ちゃん! みんなヤス子ちゃんのおかげだね」
「ちがうわよ。これはみんなでがんばったからよ」
「そうだ。これはみんなで力を合わせた結果だ!」
「ねえ、これって、最高のミッションだったよね、茶トラ先生!」
「たしかにそうだったな」
「ええと、それから茶トラ先生は『チャトラには、手荒なまねはしない』とか言っていたけれど、そのための大きな座布団だったんだね」
「もちろんそうだ。わしの分身であるチャトラを爆破するなどとんでもない。そしてこの小惑星はこれから50年間、太陽系の彼方への旅に出る。そして今度、この星が地球に接近する時は、みんなは62歳だな。そのときもみんな、今みたいに仲良しでいるんだぞ!」
それからスワンボートはチャトラを離れた。
チャトラはだんだんと小さくなっていった。
最高のミッションだったと、みんなは思った。
そしてみんなは願っていた。
太陽系を一周して、また帰って来るんだよ。
チャトラ君!
みんなで地球を救うお話 完
次回から新しいエピソードへ入ります。
よろしく
そしてゆりちゃんはすぐにヤス子ちゃんを呼び、もちろんタイムエイジマシンのことや、チャトラやアポフィスの衝突なんかの話も、全部したけれど、ヤス子ちゃんは、「ふーん」とだけ言って、全く信じてないみたいだった。
だけど、「私、自転車得意だから、スワンボートをこぐのだったらまかせといて!」と、力強く言ってくれたので、ぼくらは安心した。
そしていよいよチャトラ接近の日の夕方、茶トラ先生の実験室に、ぼくとデビルとゆりちゃんと、そしてヤス子ちゃんの全員が集合した。
見てみると、スワンボートの白鳥の蝶ネクタイの辺りには大きな座布団が付けられていて、茶トラ先生は、これはチャトラを押すためだと言っていた。
それからいよいよ日が暮れて、みんなでスワンボートに乗り込んだ。
茶トラ先生が機長席、ぼくが副操縦席。そしてデビルが後ろの真ん中。
そしてその両側に、ゆりちゃんとヤス子ちゃんが座った。
両手に花のデビルは、でれでれと、もう幸せいっぱいの顔をしていた。
それから、みんなでゆっくりとペダルをこぐと、スワンボートはぐんぐんと上昇した。
全く話を信じていなかったヤス子ちゃんは、
「うわ~~~、なになになにこれなになになに~~~ぎゃ~~~~~~!」と叫んだ。
どうやらスワンボートがのろのろと道路を走って、その辺を一回りするだけだと思っているようだった。
だけどデビルが、「だからおれが言ったとおりだろが!」というと、ヤス子ちゃんは「ひえ~、あれって全部まぢだったのね!」とぶったまげていた。
さてそれから、みんなでこいだから、スワンボートは速攻で衛星軌道に達し、それからさらに加速して第二宇宙速度…、つまり地球の引力を振り切る毎秒11.2キロに達し、さらに加速して、地球から遠ざかり始めた。
窓から見るとすごい星空で、一方、青い地球はどんどん小さくなり、やがてスイカくらいの大きさになった。
ペダルをこぎながら、みんなは外の宇宙の景色に見入り、歓声があがった。
一方、茶トラ先生はコックピットにナビゲーションみたいなものを持ち込んでいて、かりかりした雰囲気で慎重に操縦かんを操作し、ボートをチャトラへと誘導しているようだった。
そして茶トラ先生が「みんな、思い切りこぐんだ」と言うと、ヤス子ちゃんをはじめ、みんなで力を合わせて、全力でこいだ。
とくにヤス子ちゃんは「まかせといて!」といってから、顔を真っ赤にして、必死でこいでくれているようだった。
ちなみにデビルも、ゆりちゃんの隣で顔を真っ赤にして、必死でこいでくれていた。
とにかくみんなで力を合わせ、スワンボートはぐんぐんと加速していったのだ。
それからしばらくすると、はるかか彼方に、それはそれは小さな「石ころ」みたいな物体が見え、そしてそれがぐんぐん近づいてきた。
「よし! みんなのおかげで小惑星チャトラが視界に入ってきたぞ!」
茶トラ先生は興奮気味にそう言った。
みんなの力で、チャトラに追いつくのに必要な速度が出せたのだ。
そしてさらに近づくと、実際は結構大きな石ころ…、どころではなく、それはやっぱり小惑星だ。
灰色でごつごつした形で、予想通り、ちょっとしたビルくらいの大きさだった。
茶トラ先生もぼくらもみんな、初めて目の前に宇宙の小惑星を見て、とてもに感動した。
ヤス子ちゃんはうっすらと目に涙を浮かべていた。
それから茶トラ先生が上手にスワンボートを誘導し、白鳥の蝶ネクタイ辺りに付けられた大きな座布団が、ゆっくりとチャトラに触れ、ぐしゃりとつぶれた。
「チャトラにドッキング成功!」
茶トラ先生は言った。
「やったやった~!」
それでみんなで拍手した。
それから茶トラ先生は再びみんなに、「全力でこげ」と言ったので、みんなで歯を食いしばって、力をふりしぼって、ずっとペダルをこぎ続けた。
どうやらこれでスワンボートがチャトラを押しているみたいで、蝶ネクタイに付いた座布団はもうぺったんこにつぶれていた。
それからみんなでずっとこいで、そして茶トラ先生がチャトラの軌道をコックピットのナビゲーションで計算しているようだったが、最後に茶トラ先生はこう言った。
「みんな本当によくやってくれた。これで無事、チャトラの軌道は変更された。もはや50年後のアポフィスへの衝突は回避されるであろう」
「うわー、良かった良かった! で、チャトラはこれからどうなるの?」
「軌道がわずかに変わっただけだ。だから50年後にまた地球へ近づく。もちろんそのときアポフィスをかすめはするが、衝突はしない。もちろん地球にも衝突しないだろう。そして、このミッションは、ヤス子ちゃんの力なしには決して達成できなかった」
「うふふふふ、そう言われると私、てれるぢゃない!」
「ヤス子ちゃん、本当にでかしたぞ。がんばったかいがあったじゃねえか!」
「やったね。ヤス子ちゃん! みんなヤス子ちゃんのおかげだね」
「ちがうわよ。これはみんなでがんばったからよ」
「そうだ。これはみんなで力を合わせた結果だ!」
「ねえ、これって、最高のミッションだったよね、茶トラ先生!」
「たしかにそうだったな」
「ええと、それから茶トラ先生は『チャトラには、手荒なまねはしない』とか言っていたけれど、そのための大きな座布団だったんだね」
「もちろんそうだ。わしの分身であるチャトラを爆破するなどとんでもない。そしてこの小惑星はこれから50年間、太陽系の彼方への旅に出る。そして今度、この星が地球に接近する時は、みんなは62歳だな。そのときもみんな、今みたいに仲良しでいるんだぞ!」
それからスワンボートはチャトラを離れた。
チャトラはだんだんと小さくなっていった。
最高のミッションだったと、みんなは思った。
そしてみんなは願っていた。
太陽系を一周して、また帰って来るんだよ。
チャトラ君!
みんなで地球を救うお話 完
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