51:サイクロプス作戦

文字数 770文字

 そこで、午後。緊急会議。魔界第一会議室。

「というわけで、今回の議題は駅から城までの移動手段についてだよ。なにか意見はないかな?」
「バスが無理なら、バイクはどうだ? バイクなら階段脇の細い道でも走れるだろ」
 さっそく、スライムくんが発言した。
「バイクも魔界のイメージには合わないであろう」
 魔王ちゃんは言うけれど、スライムくんはちっち、と舌を鳴らす。
「ものは考えようですよ、魔王様。これまでオレたちは逆転の発想で、風呂や場内を飾り付けてきました」
 逆転の発想かどうかはわからないが、飾りつけ方を魔王城のイメージに合わせ、工夫してきたのは事実だ。

「バイクも同じですよ。なんかこう、魔界っぽい改造をほどこしてですね」
「バイクの免許がないものはどうするのだ?」
「ぬぐっ」
 しかし、魔王ちゃんに突っ込まれ、スライムくんが言葉を詰まらせた。
 すかさず、フォローに入る私。
「バイクを改造するのは面白いアイディアだけど、子供からお年寄りまで、誰でも利用できる交通手段を確保したいかな。やっぱり、温泉宿でもある以上、お年寄り客も確保したいと思うんだ」
 もちろん、お年寄りがみんなバイクを運転しない、と決めつけるわけではない。とはいえ、人を選ぶ交通手段はよろしくない。
「ぬぐぐ。まったくもってその通りだぜ」
「ごめんねスライムくん」
「いいんだ。ほかの案を考えるぜ」
「人力車ならぬ、サイクロプス車はどうでしょう」
 次に、ローパーちゃんが言った。

「サイクロプスの二人に、台車かなにかを運ばせて乗り物にするってこと?」
「そうです。サイクロプスのカイルさんとゲイルさんは、魔王城屈指の力持ち。前にオーナメントを積んだ二台なら人が乗っても大丈夫ですので、それを運んでもらうのです」
 この案には、反対意見が出なかった。

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登場人物紹介

花崎宮子 25歳  / ホテル《魔王城》経営隊長


異世界旅行提供会社《ファンタジートラベル》で働く、優秀なツアー部の社員。さまざまな企画を立て計画的に実行、ツアー企画や地域復興などで結果を出しまくっている。という経歴からの左遷をくらった。魔王城で働くがんばりやさん。



魔王 ラティ  / ホテル《魔王城》社長(魔王)


見た目は幼女。人間はRPGにでてくる魔王城を好んでいると知り、泥の魔物や触手をけしかけ楽しませようとした。それが逆効果だったことを、彼女は知らない。家族思いの優しい娘だが、プライドが高く自信家。根拠のない自信を持つ困ったところがある。

新村美咲  / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》ツアー部所属


宮子の後輩。入社1年目。努力家だけどドジで要領が悪い。胸が大きく、マイペースな性格。ツアー部で、王道的な冒険気分が楽しめる、人気のファンタジー世界を担当している。

井上 / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》広告部の先輩


宮子のことを評価している。今回の左遷に反対している。


近藤 / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》ツアー部の先輩


女性を軽視している中年の男。宮子が出世し、女性のくせに自分より上へ行くのが嫌で、左遷させた。社内でもそれなりの立場で、彼に味方している取り巻きが存在。


ローパーちゃん  / ホテル《魔王城》マッサージ・接客担当


見た目がグロい触手。敬語で喋る、真面目で魔王城の委員長的な存在。しかしグロい。

レイシア  / ホテル《魔王城》飲食担当・魔王城カフェ店長


シャイで女の子好きなゾンビ。生前は喪女なメイドで、その頃から魔王の世話をしていた。魔王に蘇生された恩義があるものの、人見知り。緊張すると、ネバネバした緑色の液体を吐く。

スライムくん  / ホテル《魔王城》データ管理・ツイッター中の人


意識高い系のスライム。

ルカ姉  / ホテル《魔王城》交通手段担当


ドラゴン専門のゲイバーに勤めていた繊細なオネエ。本名はシュヴァルツ・デスダーク・キルカイザー・ブラックドラゴン。

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