51:サイクロプス作戦
文字数 770文字
「というわけで、今回の議題は駅から城までの移動手段についてだよ。なにか意見はないかな?」
「バスが無理なら、バイクはどうだ? バイクなら階段脇の細い道でも走れるだろ」
さっそく、スライムくんが発言した。
「バイクも魔界のイメージには合わないであろう」
魔王ちゃんは言うけれど、スライムくんはちっち、と舌を鳴らす。
「ものは考えようですよ、魔王様。これまでオレたちは逆転の発想で、風呂や場内を飾り付けてきました」
逆転の発想かどうかはわからないが、飾りつけ方を魔王城のイメージに合わせ、工夫してきたのは事実だ。
「バイクも同じですよ。なんかこう、魔界っぽい改造をほどこしてですね」
「バイクの免許がないものはどうするのだ?」
「ぬぐっ」
しかし、魔王ちゃんに突っ込まれ、スライムくんが言葉を詰まらせた。
すかさず、フォローに入る私。
「バイクを改造するのは面白いアイディアだけど、子供からお年寄りまで、誰でも利用できる交通手段を確保したいかな。やっぱり、温泉宿でもある以上、お年寄り客も確保したいと思うんだ」
もちろん、お年寄りがみんなバイクを運転しない、と決めつけるわけではない。とはいえ、人を選ぶ交通手段はよろしくない。
「ぬぐぐ。まったくもってその通りだぜ」
「ごめんねスライムくん」
「いいんだ。ほかの案を考えるぜ」
「人力車ならぬ、サイクロプス車はどうでしょう」
次に、ローパーちゃんが言った。
「サイクロプスの二人に、台車かなにかを運ばせて乗り物にするってこと?」
「そうです。サイクロプスのカイルさんとゲイルさんは、魔王城屈指の力持ち。前にオーナメントを積んだ二台なら人が乗っても大丈夫ですので、それを運んでもらうのです」
この案には、反対意見が出なかった。