40:溶けない氷の温泉もある
文字数 1,199文字
フロア1は今まで通り、通常の大浴場。
フロア2は
・溶けない氷の温泉(雪原エリア)
無 色透明な美しい氷の浴槽・壁・柱を用意した視覚的に美しいエリアだ。不思議なことに、氷は滑りにくいようになっている。
・棺桶温泉(墓場エリア)
棺桶型の小さい浴槽がいくつも並び、黒い湯に浸かるエリア。十字架の墓石も建てて、ゾンビの石像を設置している。
・魔法陣の湯(魔界騎士団エリア)
例の光る魔法陣を浴槽に沈め、鎧を着込んだ魔族たちにの石像に囲まれたエリア。肌関連の薬湯は、ここにまとめる。
フロア3には、
・真っ赤な湯が不気味な血の湯
・マニア向けのドクロが浮かぶダンジョンエリア
ダンジョンエリアには、宝箱や洞窟と名付けたくり抜いた岩なんかも設置してある。
このフロアは照明を薄暗くして、ドクロ型の淡いランプで足元を照らすようにしている。
そして、各フロアの中心にあるのが、魔王の玉座に座りながら湯につかれるスペースだ。
浴場の完成後は魔王ちゃんにお湯を転送してもらい、写真を撮ってツイッターで宣伝した。その後、私は東京支部に戻り、観光雑誌に広告載せる説得だ。
雑誌や情報サイト、【ファンタジートラベル】のYouTubeチャンネルに広告や特集をお願いする場合、まずツアー部のお偉いさんである近藤に許可をもらい、それから広告部に手配してもらう必要がある。魔王城に移ったとは言え、私の上司は近藤だからだ。
ハゲ達磨に頭を下げるのは苦痛だったが、背に腹は変えられない。
しかし、近藤は言った。
「許可はできん」
「どうしてですか。この通り、【ホテル魔王城】にはお客さんを楽しませる要素がいっぱいあるんです。もう、昔の魔王城ではないんですよ。特集を組めば、必ず興味を持ってくれる人が現れるはずです」
スライムくんのアップしている写真を見せる。ぴくり、一瞬、近藤の眉が動いた。なにかしらの写真に反応したようだったが。
「花崎。お前、なにか勘違いをしていないか?」
「か、勘違い?」
「上はお前が自分の力で魔王城を繁盛させたら、ツアー部に戻っていいと判断した。だったら、お前の力だけでやらないといけないんじゃないか?」
「だから、やってるじゃないですか」
美咲や井上先輩に助けられたことは、内緒だ。
「それとも、【ファンタジートラベル】の社員なのに、社内の施設や機能を使うのはダメだというのですか!」
「そうだ。広告部の力を借りるのは、条件違反となる。お前が直接観光情報サイトやニュースサイトと交渉をするのなら認めてやってもいいがな。もっとも、大手はうちの広告部を通した案件でないと、載せないという決まりだがな」
「くっ」
つまり、認める気はないわけだ。
なんて陰湿なハゲ達磨なのか。なにがなんでも、私に成功してほしくないらしい。