46:魔王ちゃんと私

文字数 594文字


 その後もパーティを楽しんだ。ふと周りを見ると、みんな、楽しそうにしている。
 私のしたことで、みんなが笑顔になっているのだ。もちろん、私だけの頑張りではない。みんなで頑張って、その結果みんなが笑顔になって、その中に私もいる。
 もしかしたら、これが働くということなのかもしれない。お金があれば、幸せになれるのだと思っていた。だから、私は自分のためだけに働いてきた。
 だけど、本当の幸せとは――。

「宮子」
 振り返ると、魔王ちゃんが立っていた。
「また、お前に助けられたな」
「魔王ちゃん。私、なにかした?」
 とぼけてみる。
「ローパークイーンと、ローパーのことだ。感謝する」
「頑張ったのはローパーちゃんだよ」
「けど、導いたのはお前だ」
 魔王ちゃんは頬をかいて、
「だから、まあ、なんだ? これからも頼むぞ」
 照れくさそうに言った。
「私、魔王ちゃんと出会えてよかったと思ってるよ」
 反射的に、私は口にしていた。
 多分、これが私の気持ち。大切なことをたくさん気づかせてくれた、魔王ちゃんへの気持ち。
「はあ? なんだ急に。気持ち悪いやつだな」
 魔王ちゃんはジト目になった。
「魔王ちゃん」
「なんだ?」
「こちらこそ、今後ともよろしくお願いします」
 私が微笑むと、魔王ちゃんは少しだけ驚いたように私を見て、それから笑った。
「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」

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登場人物紹介

花崎宮子 25歳  / ホテル《魔王城》経営隊長


異世界旅行提供会社《ファンタジートラベル》で働く、優秀なツアー部の社員。さまざまな企画を立て計画的に実行、ツアー企画や地域復興などで結果を出しまくっている。という経歴からの左遷をくらった。魔王城で働くがんばりやさん。



魔王 ラティ  / ホテル《魔王城》社長(魔王)


見た目は幼女。人間はRPGにでてくる魔王城を好んでいると知り、泥の魔物や触手をけしかけ楽しませようとした。それが逆効果だったことを、彼女は知らない。家族思いの優しい娘だが、プライドが高く自信家。根拠のない自信を持つ困ったところがある。

新村美咲  / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》ツアー部所属


宮子の後輩。入社1年目。努力家だけどドジで要領が悪い。胸が大きく、マイペースな性格。ツアー部で、王道的な冒険気分が楽しめる、人気のファンタジー世界を担当している。

井上 / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》広告部の先輩


宮子のことを評価している。今回の左遷に反対している。


近藤 / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》ツアー部の先輩


女性を軽視している中年の男。宮子が出世し、女性のくせに自分より上へ行くのが嫌で、左遷させた。社内でもそれなりの立場で、彼に味方している取り巻きが存在。


ローパーちゃん  / ホテル《魔王城》マッサージ・接客担当


見た目がグロい触手。敬語で喋る、真面目で魔王城の委員長的な存在。しかしグロい。

レイシア  / ホテル《魔王城》飲食担当・魔王城カフェ店長


シャイで女の子好きなゾンビ。生前は喪女なメイドで、その頃から魔王の世話をしていた。魔王に蘇生された恩義があるものの、人見知り。緊張すると、ネバネバした緑色の液体を吐く。

スライムくん  / ホテル《魔王城》データ管理・ツイッター中の人


意識高い系のスライム。

ルカ姉  / ホテル《魔王城》交通手段担当


ドラゴン専門のゲイバーに勤めていた繊細なオネエ。本名はシュヴァルツ・デスダーク・キルカイザー・ブラックドラゴン。

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