15:まずはお互いを知ろう
文字数 1,067文字
つまり、そういうことだろうか。
どうやら、私は勘違いしていたらしい。
「たしかに」
私は立ち上がった。
「え?」
私ってば、魔王城が不人気で魔王ちゃんが間違っているということばかりに目がいって、基本的なことを忘れていた。
観光地や宿泊施設には、最低限満たさなければならない条件がある。けれど、譲れない部分、推したい部分、そういった要素だってあるのだ。それを考慮せず、魔王城はよくないところと決めつけ、バカにしていた。
魔王ちゃんが他の異世界に良いイメージを持っていないのも、知らなかった。
そりゃ、他の異世界と比較され、大好きな故郷を否定されたら怒るに決まっている。
私、すっごく失礼じゃん。めっちゃイヤなヤツじゃん。
「というか、魔王ちゃんが言う“魔王城は家で、みんなは家族”というのは、そのままの意味だったんだね」
私はそこを勘違いしていた。
「そうだよね。まずは魔王ちゃんが大切にしているものを理解して、その上でどうするかを話し合うべきだよね」
つまるところ、ここはホテルだけど、ホテルではなく民宿。家族ぐるみで経営している、家庭的な民宿。なのに、家族外のところから、私ばかり意見を通そうとしていたのだ。まあ、一方的に意見を通そうとしたのは、魔王ちゃんも同じだけど。だから、喧嘩みたいになってしまったのだ。前に派遣された人もそうだったのだろう。あるいは、前に来た人が酷すぎて、魔王ちゃんの警戒心が上がったのかもしれない。
見た目が幼女だから、舐められそうだし。変な意味ではなく。
魔王城らしさといっても、ローパーちゃんをけしかける以外にも、やりようがあるはずだ。互いの意見をまとめて、ちょうどよく出来ればきっと【ホテル魔王城】はヒットする。
「……あ、あの、宮子さん?」
「ありがとうレイシア! おかげで光が見えたよ!」
私は感謝の気持ちを込めて、レイシアをぎゅぎゅーっとハグした。
「あひゅうう」
レイシアは茹でタコみたいに赤くなって、力を抜かした。
「わわっ、ごめんねレイシアっ!」
「い、いえ……」
「それでなんだけど、魔王ちゃんってどこにいるの?」
この熱が冷めないうちに行動したい。思い立ったらまず動く。動かなければ始まらない。それが私のやり方だ。
「ええっと……案内する?」
「お願い!」
私が両手を取ると、レイシアは顔をさらに赤らめ、視線を逸らした。