45:たまには遠回りもしよう
文字数 814文字
その夜、私たちは食堂を使って、宣伝・薬湯成功の打ち上げを開いた。
セルシウスキャットやクイーンも参加し、みんなでレイシアの料理を食べるのだ。
バイキング形式になったため、ケーキを物色していると、ローパーちゃんは言った。
「やっぱり、たまには遠回りをしてみるものなんですね」
「ん? なんの話?」
「おしゃれですよ。見た目はきっかけで、後から中身を知ってもらう。これも遠回りじゃないですか。私は自分の外見ばかり気にして、こんな風に可愛いと言われることはないのだと、諦めていました。してみるものです、遠回り」
「ああ。そうだね。私も、そう思う。レイシアに誘われて薬湯を見に行かなかったら、クイーンさんとは知り合わなかっただろうし、ローパーちゃんのことを可愛くしてあげられなかったかもしれない。遠回り、してみるものだね」
遠回りしたから、ローパーちゃんは自分に自信を持つようになった。クイーンさんも、変わろうと思えるようになった。そして、私は二人の笑顔を見られた。人間だからこそ気づける魔界の良さもあるのだと、知ることができた。
本当に、遠回りもたまにはしてみるものだ。
「ところで私、休日はいつもウォーキングしているのですけど」
ローパーちゃん、気まぐれ私を誘ったのではなく、本当に一緒に散歩をしたかったようだ。毎週しているというのなら、好きなのだろう。好きなことを私と一緒にしたかったのだ。なのに、面倒だからとよく考えもせず断ってしまった。反省しよう。
「行くよ、行く。まだ私の知らない道、教えて」
「よろこんで」
そう言うローパーちゃんは、フリルをつけたまま可愛らしく敬礼した。