52:それ以前の問題
文字数 597文字
面倒くさそうな顔をする二人だけど、風呂を壊した件を話したら、受けてくれた。ちょっと脅しみたいだけど、背に腹は代えられない、ということで。
まずはテストとして、私とレイシアが木の荷台に乗り、傘をさした。荷台は引っ張って車輪を転がすタイプだが、階段は危ないので後ろからもう一人が荷台を掴み、持ち上げて運ぶ形となった。
「時間はかかるけど、これなら楽ではあるね」
「屋根を作ったら……傘もいらなくなる」
「それだよレイシア。山を降りたら、ミーサさんにお願いしよう」
ミーサさんにばかり仕事を押し付けて、少し申し訳ない気もするけれど。
「あっ」
レイシアが言った。
「ん? どうかした?」
「あ、あの……団体客や複数のお客さんが来たら、どうするの?」
「あっ……あー……」
そこまでは考えていなかった。
しかもこれでは、行きと帰り、どちらか一方にしか対応できない。
「カイルくんとゲイルくんって、分身できたりしない?」
「できたらやってますよ」
と、カイルくん。
ですよねー。
びゅうっ。
そこで、突風が吹いた。
横殴りの雨が傘をすり抜け、私とレイシアをびっしょりと濡らした。さらに、雨水が木の荷台に染み込み、お尻まで冷やしていく。
「カイルくん、ゲイルくん。ごめん。やっぱおろして」
これでは、団体客以前の問題だった。