52:それ以前の問題

文字数 597文字

 というわけで、サイクロプスの二人にお願いした。
 面倒くさそうな顔をする二人だけど、風呂を壊した件を話したら、受けてくれた。ちょっと脅しみたいだけど、背に腹は代えられない、ということで。
 まずはテストとして、私とレイシアが木の荷台に乗り、傘をさした。荷台は引っ張って車輪を転がすタイプだが、階段は危ないので後ろからもう一人が荷台を掴み、持ち上げて運ぶ形となった。
「時間はかかるけど、これなら楽ではあるね」
「屋根を作ったら……傘もいらなくなる」
「それだよレイシア。山を降りたら、ミーサさんにお願いしよう」
 ミーサさんにばかり仕事を押し付けて、少し申し訳ない気もするけれど。
「あっ」
 レイシアが言った。

「ん? どうかした?」
「あ、あの……団体客や複数のお客さんが来たら、どうするの?」
「あっ……あー……」
 そこまでは考えていなかった。
 しかもこれでは、行きと帰り、どちらか一方にしか対応できない。
「カイルくんとゲイルくんって、分身できたりしない?」
「できたらやってますよ」
 と、カイルくん。
 ですよねー。

 びゅうっ。
 そこで、突風が吹いた。
 横殴りの雨が傘をすり抜け、私とレイシアをびっしょりと濡らした。さらに、雨水が木の荷台に染み込み、お尻まで冷やしていく。
「カイルくん、ゲイルくん。ごめん。やっぱおろして」
 これでは、団体客以前の問題だった。

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登場人物紹介

花崎宮子 25歳  / ホテル《魔王城》経営隊長


異世界旅行提供会社《ファンタジートラベル》で働く、優秀なツアー部の社員。さまざまな企画を立て計画的に実行、ツアー企画や地域復興などで結果を出しまくっている。という経歴からの左遷をくらった。魔王城で働くがんばりやさん。



魔王 ラティ  / ホテル《魔王城》社長(魔王)


見た目は幼女。人間はRPGにでてくる魔王城を好んでいると知り、泥の魔物や触手をけしかけ楽しませようとした。それが逆効果だったことを、彼女は知らない。家族思いの優しい娘だが、プライドが高く自信家。根拠のない自信を持つ困ったところがある。

新村美咲  / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》ツアー部所属


宮子の後輩。入社1年目。努力家だけどドジで要領が悪い。胸が大きく、マイペースな性格。ツアー部で、王道的な冒険気分が楽しめる、人気のファンタジー世界を担当している。

井上 / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》広告部の先輩


宮子のことを評価している。今回の左遷に反対している。


近藤 / 異世界旅行提供会社 《ファンタジートラベル》ツアー部の先輩


女性を軽視している中年の男。宮子が出世し、女性のくせに自分より上へ行くのが嫌で、左遷させた。社内でもそれなりの立場で、彼に味方している取り巻きが存在。


ローパーちゃん  / ホテル《魔王城》マッサージ・接客担当


見た目がグロい触手。敬語で喋る、真面目で魔王城の委員長的な存在。しかしグロい。

レイシア  / ホテル《魔王城》飲食担当・魔王城カフェ店長


シャイで女の子好きなゾンビ。生前は喪女なメイドで、その頃から魔王の世話をしていた。魔王に蘇生された恩義があるものの、人見知り。緊張すると、ネバネバした緑色の液体を吐く。

スライムくん  / ホテル《魔王城》データ管理・ツイッター中の人


意識高い系のスライム。

ルカ姉  / ホテル《魔王城》交通手段担当


ドラゴン専門のゲイバーに勤めていた繊細なオネエ。本名はシュヴァルツ・デスダーク・キルカイザー・ブラックドラゴン。

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