31:魔王様にも笑顔でいてほしい
文字数 944文字
ツイッターにレイシアの写真やカフェのメニュー、店内の様子をアップしたら、オーナメントも好評になっていた。
それをミーサに伝えたら、売れないからものづくりを仕事にするのは諦めていたけど、やってみてよかった、ありがとうと言われる。
「何事もやってみるものッスねぇ」
と言いながら、ここにも笑顔が生まれた。
「正直、あたしは初めて宮子さんに会った時、いい印象は持ってなかったンスよ。前に来た管理局の人は、自分の意見だけを通そうとして、魔王様を傷つけたッスからね。魔王様が意地でも意見を変えないのは、そういう理由もあるッス」
とミーサさん。
「私も、レイシアに言われるまでは気づけなかったよ」
「だけど、気づいてくれたじゃないッスか。今じゃみんなが、宮子さんを信頼しているッス。本当はみんな、今の魔王城をどうにかしたい、魔王様に笑顔になってほしい、そう思っているんスよ」
魔王ちゃん、随分と愛されているようだ。
「このまま新しいことであたしたちが変わっていけば、魔王様もきっと新しいことを受け入れるようになるかもしれないッスね」
「ミーサさんは魔王ちゃんのこと、好きなんだね?」
「そりゃそうッスよ。魔王様はあたしらみんなの誕生日をちゃんと覚えていて、プレゼントをくれるッス。高いものではなくても、その気持ちが嬉しいンスよね」
魔王ちゃんもまた、みんなを笑顔にさせる大切さを知っていたのだ。ただ、勘違いもあったせいで、それが客にはうまく向いていないだけで。
「宮子さん。あたしらの多くは、魔王様や魔王様のご両親であるシュヴァルツ様に、大戦時代命を救われたり、行き場をなくしているところで拾われたりしているッス。だから、魔王様に対する感謝や尊敬の気持ちが前に出すぎてしまうッス。だけど、宮子さんなら、魔王様に堂々と意見することができる。その上で、魔王様やあたしたちのことも考えてくれている。そんな宮子さんに、魔王様を笑顔にさせてほしいッス」
「もちろんだよ。お客さんが笑顔で過ごせるホテルにするには、まず従業員の私たちが笑顔にならないとだからね」
「つまり、笑顔の魔法ッスね」
笑顔の魔法。いい響きだな、と私は思った。