第2話

文字数 1,983文字

2。

「大丈夫?」
「……うん」
ここは保健室。ベットにはカズイが寝ている。赤くなったおでこを冷やしながら…。

2時間目が終わった後の長休みだった。相も変わらず外で遊ぶ。今日は、私とツネトモ、タケオミ、マコト、ヒロノ、スミユキで校庭に出た。今回はボールではなく、総合遊具で遊ぶことにした。うんていやジャングルジム、滑り台なんかがひとつになった大きな遊具だ。4年生になったから、これで遊ぶことができるというルールなのだ。それぞれ終わりが微妙に違うので、下駄箱に集合してから校庭へ行く。
「オミって、ツネ様と仲いいんだね」
「仲良いってほどじゃないぞ、それと…ツネ様って…何?」
「ツネトモのことだけど…」
「わかってるよ。おかしくね?」
「え、ツネ様…変?」
「別に、僕は嫌じゃないよ」
「…………ツネがいいなら、いいけどさ」

え?変かな?

ヒロノとの間で呼んでたツネトモのニックネームだ。いつの間にか本人目の前にしても呼んでて、女子軍の間では定着している。
「お待たせ~」
ヒロノ、マコト、スミユキが下駄箱に到着。
「行こうぜ」
靴を履くと、みんなで校庭に向かって飛び出す。今日はいい天気だし、気持ちよく遊べそうだ。
校舎は前方、後方と二列からなっている。前方が校庭がわだ。後方は体育館が近い。後方校舎が4~6年の教室がある。なので、校庭へ行くときには校舎横のスペースを通って校庭へ行く。広さはそこそこあるのだが、一気に人が詰めかけると、渋滞が起こってしまうのだ。
「先に行っとくぞー」
スルリとうまくすり抜けながら人の波をかわしていくマコとツネ様。
「さっすがサッカー少年」
ヒロノが感心したように言う。
「え、ツネ様もサッカー派?」
「2人ともジュニアチームに入ってたはずよ」
「え、すご…。オミは違うの?」
「俺は野球。ユッキーもやってるよな」
「うん」

はあー……みんな、なんかしらやってるのね~。

だから動きが素早いのか…。妙に感心をしながら総合遊具へ向かう。
「ねえ、私たちも何かする?」
ヒロノがこそっと声をかけてきた。
「ええー、何かって?」
「実は~バレーボールどうかなって…」
「バレーボールかあ…」
「マホロがやるなら、私もやる」
ヒロノと違って私は運動それほど得意ではないんですけど…苦笑いしかない。
「おい!マホロ!」
遊具に到着して…さあ、上ろうとしたとき、叫びながら駆けてくるものがいた。
呼ばれた方向を見ると、栄がいた。
「おまえ…、弟いたよな!」

え……

一気に周囲の温度がわからなくなる。
「な、なに?」
「1年…だよな!」
「う、うん」
呼吸が乱れた状態で話すサカエ。
「何、どうしたん…」
ヒロノも驚いて声をかける。
「名前、カズイ?!



「おい!そうなのか」
「カズイがどうしたの?!
「東ビオトープ近くの草場で頭打ったって!おい……!」
私は東ビオトープに走り出した。

ビオトープに来たときには、もうカズイはいなくて、先生と2、3人の6年がいた。そこにいたハルに保健室に行ったらしいことを聞いて、急いで保健室に向かったのだ。
「ぜんそくは?」
「だいじょうぶ……」
「わかった。あとはお母さんが来るまで寝てなね」
「うん、お姉ちゃん……」
「ん?」
「ぼく、ほんとに、だいじょうぶだよ」
「……わかった。お姉ちゃんは教室に戻るから」
「うん」
いつも泣いてたのに、強くなっちゃって…。
ベットを囲っているカーテンを少し開けて出ると、またしっかりと閉める。
「おお、真称さんの弟だったのね」
「……お世話になります」
「……まあ、礼儀正しいこと。はい、任せなさい」
「あの……弟はどうして怪我したんですかね?」
「ああ、それは今、先生たちが聞き取ってるから」
「聞き取り…って」
「ま、あなたは教室に戻りなさい。授業が始まってるでしょ?」
「…はい、失礼しました…」
保健室を言われるままに出たけど、聞き取りって言った…? ビオトープにいた6年生と先生が頭のなかに映し出される。
そういえば、いたよね……まさか……
「マホロ」
「オミ…」
「先生が戻ってこいって」
「うん、分かってる……」
「……弟、どうだった?」
「うん、だいじょうぶ。おでこが赤くなってただけだから…」
「そか…ケンカでもしたか?」
「……わかんない。でもカズイはぜんそくもってて、運動もあんましないし、からだ弱くてすぐ熱出すし、ケンカするような子じゃないけど……」
「……おかんか」
「うるさい…」
「……マホロの弟だろ?だいじょうぶだよ」
「うん、ありがと」
「おう」
4年の教室は後方3階にある。保健室は前方校舎の1階で、少し遠い。オミと後方校舎へ行くために渡り廊下を通ってから、3階まで上がることにする。渡り廊下を渡ったところに大会議室がある。そこから山下先生の声が聞こえる。確か……
「山下先生って6年担任だよね…」
「そうだけど…」
なんで、ここに山下先生の声が響いているのか……私は確信があった。カズイと関係がある。

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