第12話

文字数 1,398文字

「え…玄都?!」
「ねえ~驚くよね~」
放課後
赤組応援団は、大会議室で応援歌の時に使う小物を作る。応援団以外は手にお花紙で作った紙花をつける。それを一斉に作るのだ。なかなかの数を作るので、友だちも赤組であることを条件に、連れてきて良いと言われた。ってことで……
永朝(ツネトモ)誠斗(マコト)に呼ばれて手伝いに来ている。春崇(ハルタカ)もいる。
「まあ、さもありなんってとこさな」
「なんだそりゃ、ツネのいうことはわかんねえ」
「そうなることは分かってた、みたいな事だよ」
「じゃあそういえよ」
「ああもう!ピリピリしないの!」
ピンク色の花紙を作りながら、私はマコとツネ様を目で制する。
「玄都ってさ、いいやつじゃんか」
春崇の言葉に誠斗が反応する。
「なんだよ、ハル!」
「え、だって、助けるっていいことじゃんか」
マコの勢いにちょっとたじろぐハル。
そのやり取りを眺めながら、私はちょっと思い出していた。玄都が真称に向けてかけてる言葉には、別に濁った感じはなくて……
「まあね~、どういう事なのかは分かんないけど、マホロの味方してくれるなら、私はいいやつ認定するけど」
組が分かれて、ちょっと心配だったけど、真称はそれなりに楽しそうだ。そうなんだよね、真称ってそれなりにこなしちゃうのよね~。クラスが分かれた4年の時も、クラスが分かれたからって大きく凹んでた訳じゃなくて……。それが、ちょい寂しいような、そうであってくれた方が嬉しいような…。クラブ問題は、ちょっとマコたちにつつかれちゃったけど、私は真称の気持ちが分かってたから、てか、分かってたつもりだったのかな?
「尋乃、」
「なに?」
ツネ様が、作業の手を止めずに話しかけてくる。
「尋乃から見て、玄都はいいやつなんだ」
「うん、真称が警戒してないからね」
「ああ…それ分かる気がする」
「でしょ、ハル」
ツネ様とマコが顔を見合わせる。
「真称ってさ、なんかセンサーみたいなの持ってる気がするんだよね。大丈夫、みたいな……」
「なるほどね~」
ツネ様は相づちを打ってくれたが、マコは違った。
「何いってんだよ、あいつはみんなウェルカムだよ」
「え…?」
マコの発言に思わずみんな手が止まる。
「“いろいろあるんだ”って、“みんな事情がある”って言って、自分が辛くっても文句言わないじゃないか。“大丈夫”とか、“何が?”とか、ビックリするぐらい後回しだよ。たまに怒ったかと思えばカズイのためだろ?」
声色を真似たり、身振り手振りの熱演をするマコに、思わず呆然としてしまう。

まあ……、確かに……そうだけど、

「何がセンサーだよ。ぶっ壊れてんだよ、センサー。素通りだよ。通りたい放題だよ。坂下事件は過去かよ……」

えっと……

「……マコもさ、似てるよ、マホロと」
「似てねえよ!」
手際よく出来上がった紙花を段ボールにいれに行くマコ。
私とツネ様、ハルは顔を見合わせる。
「えっと……、反抗期なのかな……?」
私の言葉にちょっと笑うツネ様。
「まあ、気持ち分かるけどね……」
「え?誰の?」
「マコの」

そうなの?

「とにかく、真称は自分の事になると尋乃がいう“センサー”は使えなくなるのは、その通りかなぁ」
とツネ様。
「それはそうだね」
とハル。
「玄都は、僕もちょっとだけ知ってるけど、確かにいいやつだと思うよ。まあ、マコとはぶつかるかもな~」
「ツネもそう思う?」
「うーん…、そうだな。似てるもんな」
「なー」

ええ?似てる?マコと?

私は紙花を作りながら、首をかしげた。
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