第13話

文字数 1,577文字

13。

結局、高橋くんこと高兄(タカニイ)とめっちゃ驚いていた(サカエ)とすぐ後で合流した春崇(ハルタカ)そして尋乃(ヒロノ)と私は、ヒロノのイチオシの“くじ引き”をしに行くことになった。
「あれ!あの2等のぬいぐるみ!あれが欲しいの!」
「無理だって!マホロ、言ってやれよ!」
とハル。あまりのヒロノの意気込みにちょっとひいてる。
「まあ…、ヒロノの気持ちがおさまらないからさ」
「そうよ、やってみなきゃわかんないでしょ?おじちゃん、1回いくら?」
「200円」
「うわっ、高っ!」
「うるさいハル!おじちゃん、2回やる!」
「え!2回もやるの?……俺は1回でいいや」
そんな3人をちょっと後ろで見ていた。
「元気だなー」
騒いでる3人を見ながら、苦笑する高兄。その顔をみて、ホッとした表情を見せる栄。
「何だか久しぶりに見た気がする」
「え?」
「高兄の笑った顔」
「……おまえ、キモいぞ」
「なっ…!ひでぇ…」
「はは、嘘だよ」
頭をポンポンとされた俺は、バスケの頃の雰囲気が過った。シュートが決まった試合の後は「ナイス」って誉めてくれた。
「あのさ、サカエ」
「ん?」
「カズイって誰?」
「ああ……マホロの弟。何で?」
「いやさ、さっきマホロから名前がでてさ……」
高兄はマホロとヒロノに話していたことをチラッと話してくれた。俺はこの間の学校での坂下とのトラブルを話した。
「そんなことあったんだ……」
「うん、その時カズイが怪我したんだ。マホロ、その時パニクってて、すごい怒ってた」
「そか。マホロって変わってるよな…」
「え」
「いや…自分のことが後まわしって感じがするっていうか……」

確かに……

「マホロだって痛い思いもしてるんだけど、そこはあんまり言わないな……」
「…………坂下、今クラスが違ってて、去年とはつるんでる奴らも違うんだ。同級連でもさ、友だち関係続かなくて。あいつ、すぐキレるから……」
「心配してんの?」
「心配っていうか……」
高兄は優しい。高兄の“友だち圏内”に入ったら、とても心地が良い。向けられる気持ちがパワーになるというか。安心できるのだ。
「ほっとけばいいよ、高兄がしんどいだけじゃん、そんなの友だちじゃないよ」
「サカエ……」
だから、高兄の優しさがわからない行動をするやつは腹が立つ。
「この前もさ、俺たちが遊んでるとこに来て、からんでさ、マホロのリュックについてたマスコット、千切って持ってったんだから……。」
「え……なにそれ……」
「俺たちがいて、見てるとこでさ。マホロはもういいっていうけど、あいつさ、なんでそんなことすんだか分からねえよ」
俺は高兄が、昔と同じような感じていてくれたからか、妙に話しやすくて、思ってたことが口からボロボロとでてきた。だから、マホロが声かけてくれなかったら、もっと言ってたかもしれない。
「またその事?もういいって言ってるのに」
テント側に寄っていたマホロが、こっちに向かって歩いてきた。
「ほんとにいいんだってば」
「マホロ……」
「私、手洗ってくる。ポテトで汚れちゃったからさ」
公園の端にある水呑場に歩いてくマホロを見送りながら、はーっとため息が漏れた。
「怒るだろ?普通は」
「だな」

まあ、俺がこだわるのも変だけど。

「その……マスコットの話だけどさ」
「え?……」
「白いほわっとしたやつ?」
「う、うん。え、何で知ってんの?」
高兄の首がカクンと下に向いた。
「はー……、そか……やっぱな……」
高兄は、首もとをポリポリとかきながら呆れたようにため息をつく。
「……なに……?」
「修学旅行後ぐらいからかなぁ……あいつが持ってた気がする……」
「はあ?!マジ?」
「旅行のとき買ったのかと…まあ分かんないけどさ、サカエたちが言ってるマスコットかどうかは。何か違和感あったから……ああいうの持ちそうになくて」
なんだそりゃ。何がしたいんだ?まさかだけど、マホロのものが欲しかったとか……?

いやいやいや……それはないだろ……

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