第9話

文字数 1,291文字

9。

翌日、私は熱を出した。
そんなに高くはなかったが、お母さんが休みなさい、と言ったので、休んだ。
今日は1日、誰もいない家で過ごした。いつもいない時間にここにいるのは変な気分だ。今日はカズイのお迎えもいかなくていい。朝はカズイは「行きたくない」とダダをこねていたけれど、大人が家にいないからしょうがない。
人がいない家は、私にはとても静かで、気持ちが落ち着いた。なにもしなくていい感じがとっても贅沢な気分だ。

ピンポーン……

意識が戻ってきたときには、外から小さい子の声が聞こえていて……。時計を見ると4時になっていた。
「え、もう夕方……」
お昼頃トイレに起きて、それから……
今まで寝ちゃっていたようだ。

ピンポーン……

インターホン、やっぱ鳴ってた……。
布団からでて、玄関に向かい、除き穴から見てみると、そこにはヒロノとマコ、で……ん? もうひとりは…誰だろう…見たことあるような気もする。
鍵を外し、鉄の扉を開けると、ぎぃっと音がなった。
「マホロ、え?ひとりなの?」
「うん、どしたの?」
「え、連絡帳と、プリント持ってきたの」
あ、そっか……
「ありがと」
茶色の封筒を受けとると、中にはプリントが4枚ぐらい入っていた。
「病院、行ったか?」
マコが言う。
「うーん、まだ行ってないけど……、大丈夫だよ」
「でも、今日、熱って……」
「そんな高くないし、気分も悪くないから明日は学校行くよ」
「あのね……」
マコでもなく、ヒロノでもない声がした。ヒロノの後ろからひょっこりと顔を出す。さっきも思ったけど、どっかで見たことがあるんだけど……

 「……マホロ、息できる?」

あ…あのとき声をかけてくれた子だ。
「自分の体だろ?大事にしなきゃだめだよ。熱は下がったの?」
「え…た、たぶん」
「おまえなあ……熱ぐらい計れよ」
マコがちょっと怒って言う。なんで怒るのよ。
「ヒロノたちが来るまで寝てたから……」
3人は顔を見合わせる。
「今まで寝てたの?!
その件については、私もビックリです。
「でも、体がそれだけ疲れてたってことかもしれないよ。頭は痛くない?」
「うん……痛くない」
「そう、よかった。でも、一度診てもらった方がいいと思うよ」
「う、うん……」
チラリとヒロノを見ると、え?って顔をする。少し間があって、ヒロノが気付く。
「あ、え?あ、ああ!永朝(ツネトモ)だよ。めっちゃ頭いいの。そこのT病院の息子」
「え、おまえそうなの?」
私が驚くより先にマコがビックリした模様。
「知らなかったのかよ……」
それを聞いて違う驚きを感じているツネトモ。
「まあ、俺にとってはどうだっていいことだからなー」
「はあ……マコらしいっていうか」
あきれたように言うと、こちらに向き直るツネトモ。
「ヒロノからよく聞いてたんだ君の話し」
「そ、そうなの?」
「うん。クラスは違うけどよろしくね」
にっこり笑うと八重歯が見える。マコとも仲が良さそうだし、ヒロノとも仲がよいようだし……きっと、友だちになれる。
「よろしく。今日も、昨日のことも……、ありがとう」
「どういたしまして」
ありがとう……マコ、ヒロノ、ツネトモ。今日、友だちの顔を見れて良かったかも。「ツネトモ」、私の世界へようこそ。




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