第1話

文字数 1,788文字

 1。

 とうとう、私たちは、最終学年の6年生になった。

 6ー1 山下先生
 誠斗(マコト)玄都(ゲント)(サカエ)(タクミ)
 6ー2 森先生
 真称(マホロ)尋乃(ヒロノ)
 6ー3 岡野先生
 永朝(ツネトモ)丈臣(タケオミ)澄幸(スミユキ)春崇(ハルタカ)

 6ー4まであるが、今回、イツメンは4組には入らなかった。
 最終学年だから、同じクラスが良かったけれど、こればかりは仕方がない。でも、尋乃と同じクラスは結構嬉しい。修学旅行もあるから、同じ班になれる可能性もある。
 6年生はいろんな行事の先頭に立ったり、大会があったりと、思ったよりもやるべきことが多かった。先生たちとの話し合いが多くなることも、驚いた。
「ねえ、真称」
 給食が終わり、昼休みの時間。尋乃が声をかけてきた。
「ん?どした?」
「次って体育じゃん、女子の着替え部屋の鍵取りに行くんだけど、一緒に来てくれない?」
「いいよ。その後でいいからさ、購買行くの付き合ってくれる?」
「もちろん」
 視線があって、ニッて笑い合う。
 お互いに、お願いができる関係になっていた。
 4月が終わり、GWも過ぎた。季節は間もなく夏になろうかとしているが、約3週間後、私たちは修学旅行にいく。
 クラスの中は、なんとなくソワソワした感じがあった。初めて友だち同士で旅行をするという、なかなかない経験を前に、自然と浮き足立っていた。
 6年生の教室は後方の校舎で、職員室、は前方校舎と後方の校舎を結んだ渡り廊下のある場所に位置していた。渡り廊下といえど広く、後方校舎を背にして右側に職員室があった。その下の階に購買がある。
 尋乃が職員室へ鍵を借りに入室している間、私は廊下で掲示物を見ていた。

 あ……またマコが賞取ってる…。

 大人顔負けの習字がどどんと掲示され、金賞と書かれていた。ほかの作品もあるが、マコの字は、とても魅力的に見えた。
「お、珍しいとこで会うじゃんか」
 振り向くと丈臣がいた。
「確かに。何してんの?」
「班長ノート持ってきた。朝、出し忘れてて」
「オミが?」
「ユッキーが」

 はは、なるほど…。

「給食当番で遅くなるって言うから、代理。マホロは?」
「尋乃を待ってる」
「そっか。ああ、昼休みさ、ツネとかとサッカーすんだけど、来る?」
「うん、行く」
「じゃあ、運動場な。東ビオトープ近く」
「分かった」
 オミが行ったのと同時ぐらいに尋乃が職員室から出てくる。
「いやー、山下先生の迫力よ…」
「何、なんかあった?」
「女子の着替える部屋の鍵を取りに来ましたー。って言ったら、こーんな顔して止まるからさ、なんか間違ったかと思ってこっちも固まっちゃって」
「で?」
「そしたら、ちょっと間があって、“そうか、合同体育だったな”って。どうやら忘れてたっぽいんだけど、こーんな顔して言うからこっちが間違えたかと思ったわ…」
「山下先生だと、こっちが間違えたって思っちゃうよね」
「でしょう?」
 こーんな顔、ていうののままこちらを見て話すから思わず笑ってしまう。
「あ、そうだ、オミがサッカーするからって誘ってくれた。行くっていっちゃったけど…」
「いいよ。購買行って、早く行こう」
「うん」
 2人はすぐ下の購買へ向かった。


 購買は結構混んでいた。どうやら次の時間が書道の学年があるらしく、習字紙購入希望者が列をなしていたのだ。
「わお……」
「まあ…急ぎじゃないから、今日はいいや」
「そうなの?」
「じゃあ、鍵を開けてから、校庭行こうか」
「だね」
 5時間目が体育の場合、女子の着替え部屋は早くに開けておいてOKなのだ。その代わり、誰かが開けた教室にいることが条件なのだが、誰かが必ず部屋の前で待っていて、要員はいくらでもいたので問題なかった。案の定、部屋前で1組の女子が待っていた。
「サンキュー、尋乃」
「おう。私たち、校庭に行ってくるから」
「了解。私も千穂子(チホコ)もいるから大丈夫よ」
「任せた」
 尋乃、長髪をひとつにくくっている活発そうな女子に鍵を渡す。その女子の隣にはボブの髪型を青いピンでとめてる女子がいた。両手で体操服を抱えていえる姿が可愛い。
 そのまま下駄箱に向かう。
「1組さんだよね。知ってるの?」
「まね。保育が一緒だったんだよね。和紗(カズサ)って言うの。髪短い方が千穂子。あの二人家が近いから仲良くて」
「家、近くなくても、仲良しもいるけど」
 ちょっと間があって、尋乃が私の顔を見る。
「やだ、私たちのこと?」
「違った?」
「違わない」
 ふふふ、と思わず二人で笑いながら、校舎を出た。
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