第5話

文字数 1,285文字

5。

後日、カズイのケガは額の打ち身とこめかみ近くの切り傷のみで、目にも頭にも異常はないとのことだった。
「良かったね、マホロ」
「うん、ありがと、ヒロちゃん」
「なんだよ、俺たちだって心配しただろ?」
東公園でバドミントンをしているのは、ヒロノ、ハルタカ、サカエ、私の4人だ。簡単な中央線、つまりネットに見立てた線を引き、2対2のダブルスをしている。私とヒロノ対ハルタカとサカエだ。
「来週じゃね?6年が修学旅行に行くの」
ラケットをブンとふると、見事にシャトルが飛ぶ。
「わっ……!」
私の頭上、遥か彼方にサカエの打ったシャトルが……。
「もう、サカエってば、とれん!」
「わはは、すげえだろう?」
もう…アウトラインがないからって、ホームランじゃないか。私はムッとしながら、離れたところに落ちたシャトルを拾った。
今日は土曜日、ただいま午前11時。朝から集まってバドするなんて、まるでクラブ活動みたい……。後のいつメンは塾やクラブで忙しい。午後は3時くらいに集まれそうかも?ってことだった。
「そう言えばさ、坂下と高橋ってケンカしてるらしいよ」
おっと、突然の爆弾発言、ヒロノさん。
「え、どこ情報?」
シャトルを打つ手が止まる、私。
「カズイのトラブルの翌日だったかな~、朝学校に着いたらね、後方校舎の下駄箱で、6年の女子が噂話してたんだって」
「……ヒロノって、ほんとそういいうとこに出くわすよな~……」
呆れ顔で話すハル。
「そういうとこって、どういうとこよ。噂話はね、情報の宝庫よ」
「なんだそりゃ」
「わかんない。よくママが言ってるの」
ヒロノのママはPTAの活動にも参加するハツラツママさんだ。
「でね、“あれは高橋怒るよね”とか“坂下やっちゃったよね”とか言ってたんだよ」
怒らせたんだ……坂下が高橋を。
「何したんだ?坂下のヤツ……」
サカエは呟くように言った。
「さあ、そこまではわかんない」
何があったんだろう。まあ、心配することではないし、こう言ったら何だけど、好きじゃないし坂下。でも、修学旅行前にケンカって嫌だろうな……。
「まあ……坂下ってさ、同学年でもいろいろやらかしてんだろ?」
サカエの言葉にハルが賛同する。
「だよな~。よく6年怒ってるもんなあ。この間のカズイの時もさ、その前に石投げたりしてたのって始まりは坂下らしいぞ」
「どゆこと?」
「さあ……詳しくはわかんない。そこにいた6年が言ってた。あいつが投げてきたから投げたって」
っていうか……投げてきたから投げ返すってどういう理屈よ……。6年生にもなって…。
自分の考え方にハッとした。嫌だ、こういう言い方って大人の言うセリフみたいで……、心地悪い。
それに、坂下だって……
「そうした理由って何かあったのかな……」
私の呟きに3人がこっちをみて止まる。
「え、なに?」
ヒロノがニカッと笑って駆け寄ってくる。
「そうだよね~マホロってそういうことだよね~」
「だから、なに、」
「いいの、いいの。そうかもね、なんか理由があったかもだね」
「…………ほんと、マホロってさ」
「なに、ハル」
ハルはサカエと顔を見合わせて“やれやれ”って感じで溜め息をついた。
だから、何よ!
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