第14話

文字数 2,346文字

一方、公園にいる先発隊は、作戦会議中だった。
「てか……マコ、なんの作戦会議だよ…」
(サカエ)、さっき食べたばかりなのに、持ってきたお菓子をまた食べてる。
「次の水族館での事だよ!って、どんだけ菓子持ってきたんだよ!300円以上だろ、それ!」
「いいだろ?!姉貴に取られないで食べれることなんて滅多にないんだからさ」
「……そっ……そうか。なら仕方ないな」

 なんの話だよ……

永朝(ツネトモ)は呆れながら聞いていた。学校であろうが、外であろうが、食べるスピードに変わりがない誠斗(マコト)。好き嫌いもなく、気持ちがいい食べっぷりだ。どこにいようとマコのペースは同じだ。僕は、あまり食べられなかった。バスが少し苦手なこともあるが、朝から考え事をしていて、何だかお腹がすかなかった。
僕の気がかりは……
チラリと視線をはずすと、僕らの集団の近くに美花菜(ミハナ)がいた。まあ、彼女だけではなく、数人の友達といるのだが……。
小さい時から父親同士が大学の同級生ということで、会う機会が多かった。誠斗(マコト)尋乃(ヒロノ)と同じ幼馴染みと言える。けれど、僕の中での気軽な友人は彼らで、美花菜とは一定の距離があった。
今までは、それほど気にならなかった距離感だが、この間から妙に近いような……。
「おい、ツネ」
「え?」
「聞いてたか?」
「あ…ごめん、なに?」
「しっかりしてくれよ。お前が頼りなのにさ」
マコの発言に玄都(ゲント)が言葉をはさむ。
「おい!俺だっているじゃんか!」
「はあ?!なんでお前を頼るんだ?!

もう……

「水族館に着いたら、自由行動が1時間くらいあったはずだからさ、いつメンで回れるねって話だよ」
オミが言葉を補足してくれた。
「ああ、ね。サンキュ。わかった」
「何?考え事?」
僕の様子を見ながら気になったんだろうな。オミは塾で知り合って、それからの付き合いだけれど、いつも冷静で、ちょっと下がって見守ってるところがある。かといって偉そうな態度もなくて、居心地がいい。
「オミー……」
「な…なんだよ」
「僕って優柔不断?」
「はあ?……何いってんの?」
「ちょっと自信なくしててさ……」
「ああ?ツネが?お前さ、冗談でも他でそんなこと言うなよ。敵が増えてしゃーねーわ……」
「冗談じゃないんだけど……」
「…………」
僕は、いろんな事を自分で決めてきた気でいたけど、それすらも不安要素になりそうだ。友だちとの関係は僕にとって大切なものだけど、僕の伝えたいことが相手にうまく伝わっているのかどうか、こんなに不安に思うなんて……。僕は相手を信用していないのかな?
それは、ひどいことだ。友だちを信用できないなんて……。
「あのさ、何不安になってんのか知らんけど……俺は何かあったらツネに相談したいなって思うよ」
「オミ…」
「そう思ってるお前が、俺になんか話そうとしてることは、俺はちょっと嬉しい。だから……自信がなくてしんどいなら、あんまり頑張るな」
「え……」
「え、頑張りすぎてしんどいのかと思ったんだよ……。それか…マコがうっとうしいならほっとけ。あいつは勝手に落ち込んで戻ってきて、また迷惑かけるから」
「……何か、ありがと」
「アドバイスにもなんねえな、俺って」
にかっと笑うオミ。

“頑張りすぎて”…か……

そんな風に見てくれてるのか。僕には頑張ってる自覚がないけど、そうやって声をかけてくれるのって、気持ちのモヤモヤがほどけていく。不思議なもので、ちょっと軽くなったら停滞した考えがスルリと動き出す。
美花菜が最近よく話しかけてくるのは、久しぶりに同じクラスになったからだと思っていた。もともと、人見知りの強い彼女は、僕が他の子と話してると寄ってこないのだ。距離感はこんなものだと思っていたけど、僕の思ってたのとは違う理由があるのかな?
「オミ、あそこに美花菜がいるの気づいてる?」
「え?」
周囲を見て気付いた様子のオミ。
「ああ、いるな。何?何かあった?」
「あった訳じゃないけど……ハルがさ、言ってたじゃん、バスで」
「ああ、気を付けといてってやつか?」
「この間さ、和紗(カズサ)と美花菜がトラブったの知ってる?」
「え、そうなん?お前すごいな」
「内容までは分かんないけど、千穂子(チホコ)がさ」
「ああ、いつも和紗と一緒にいる…」
「そう、千穂子が聞きに来たんだよね」
「何を?」
「僕とマコがしてるミサンガの事」
「ミサンガ?」
「うん。それって僕たちだけのモノか、どっかで買ったのかってさ」
「うーん、そこに美花菜が関係してんの?」
「美花菜が持ってるかどうか聞かれたんだ。僕は知らないって答えたんだけど…」
「はあ……?何でツネに聞くんだよ。本人に聞けばいいのに。てか…本人に聞けないってことか」
「やっぱそう思うよな。で、ミサンガのこと聞いてきたってことは、ミサンガがらみかなって」
「……何かあったかもな~。ああ、で、尋乃が首突っ込んでるとかか……」
「僕に聞いてきたってことは、知らないとこで何かしら僕らのしてるミサンガが関係してるかもしれないだろ?だとしたら、尋乃は無視できないだろ?」
「ああ……だな」
で、そんな尋乃が心配な春崇(ハルタカ)が関わってしまいそうな予感。
「うーん……悩むのしんどいから直で聞こうかな……」
「はは。どこが優柔不断だよ。判断力と決断力の塊じゃね?」
僕は、豪快に笑うオミを見て、苦笑した。
「あ、いたー!つね様ー!」
ちょっと離れたところから尋乃が声をかけてくる。一緒に真称(マホロ)もいる。食べ終わったようだ。いつもなら2人とも早いが、明日菜が食べ終わるのを待っているようだと言っていた。マコが、昼食時に2人のとこに和紗と千穂子が移動したのを見て気にして声かけにいった時、様子を見て来たようだ。あの面倒くさがりが、真称が絡むと行動が早いんだよな。
「ところでさ…」
「ん?」
「あのつね様ってやつさ、あのままでいいの?」
「え?別にいいよ」
「あ……そ」
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