第5話

文字数 1,435文字

 
 先に終わった1組は、ぞろぞろと教室を出る。
「なっ、玄都(ゲント)?」
 急ぐ誠斗(マコト)の横に玄都がピタリとついた。
真称(マホロ)待つんだろ?俺も待つ」
「な」
「別にいいだろ、帰るだけだから」
「な、ま、そりゃ…」
「マコってマホロのことになると挙動不審だな」
「やかましいわ!」
 そんなに仲良くなったつもりはないが、同じクラスになってから、よく行動が同じになる。勉強の面でも運動の面でも、何だかよく視界に入ってくる。ツネほどだとは思わないが、頭も切れるし、体育ではチーム戦のものは本当にあてになる。サッカーでも、キーパーをしてくれるが、手足が長く反射神経に優れている玄都が頼りになる。
 とはいえだ!それとこれとは別の話だ!
「なんでお前に、そんなこと言われなきゃいけないんだよ!」
「うーん、友だちだから?」
「おまっ…、友だちって…いつからだよっ!」
「え?(タクミ)を応援しただろ?」
「した」
「友だちじゃん」
「そ、そうだったな!」
「なんだよ。わかってんなら確認すんなよ」
 こいつのこういうとこ慣れない…。シレっと懐に入ってくるんだよ。
 下駄箱に到着すると、靴をはいて真称(マホロ)永朝(ツネトモ)の到着を待つ。
 玄都は降りてきた匠に声をかけて、何やら話をしている。俺は、たいして時間も経ってないのに、随分待っている気になっていた。
「マコ?」
 突然、声をかけられて驚く。声の主は和紗(カズサ)だった。
「おう。和紗、また明日な」
「え?うん。てか、早く教室出たのに何してんの?」
「ああ、人待ち」
「あ、つね様?」
「まあね」
「さっき、3組終わってたから出てくるんじゃない?それよりさ、今日はクラブ来るよね?」
 和紗と俺とツネは同じクラブに所属している。中学からは男女が分かれるので、今年までだ。
「ああ……たぶん行けると思う」
「…そ、じゃあ、あとでね」
「おう」
 和紗、先に靴はいて待っていた千穂子(チホコ)と児童玄関から出ていった。
「…マコって、和紗と仲良かったっけ?」
「うわーっ!」
 すぐ後ろからの声掛けにのけぞる。
「なんだよ、ツネ、遅いよ」
「2組が終わりそうだと思って、ちょっと待ってたんだよ」
「終わったか?」
「まだ…なんか話してる」
「ああ?森ってよく話す人?」
「うーん、わかんないね。今年来た人だからさ。てか、和紗ってあんなに話してたっけ?」

 ああー……確かに

「そうだな。6年になってからだな、話しかけられるようになったのは。クラブには4年ぐらいからいたっけ?」
「…………ほんと、マコってさ」
「なんだよ」
「…………ちゃんとして」

 へ……?

「な、ツネ、おまえ、それどういう……」
「あ、マホロ」
「え」
 ツネの言葉に、階段を見ると、マホロがいた。階段から降りてきた彼女は真っ青で。ツネの言葉はもう頭になかった。
「おまえ、顔!」
「なに?マコ、声が大きい……」
 手で口を押さえる。
「ごめん」
 トタトタと階段を降り、下駄箱で靴を下ろす。上履きを脱いで下駄箱にいれる動作もしんどそうだった。
「大丈夫か?」
 俺の問いに顔を上げる、マホロ。
「うん。思ったより平気。あと帰るだけだし…。でも、ありがと。一緒に帰ってくれるって、尋乃から聞いた」
「ああ。ツネも玄都もいるよ」
「わあ…VIP待遇」
 ちょっと恥ずかしそうに苦笑いする彼女に、ドキッとする俺がいる。こうなってくると、俺は確信せざるを得なくなる。
「遅かったな、真称」
 玄都が玄関外から声をかけてくる。
「ごめん、待ったよね」
「いいよ。何かあったんだろ?」
「うーん…私たちじゃないんだけどね…」
 俺とツネ、玄都は顔を見合わせた。


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