第12話

文字数 1,198文字

12。

あれから、ツネトモの本も借りると、急いで図書館を出た。どちらともなく、早足で家路に着こうとしている。
「……恥ずかしかったね、ごめん」
「ははは、だね……。けど、なんで大声だしたの?」
「え、……まあ、つい……」
ゴニョゴニョと何だか言いにくそうなツネトモ。いつもハキハキと話をするのに、こんなとこもあるのか……
「あれ?ツネとマホロ?」
大通りを超えて、団地の道路に入った辺りでマコに出会った。
「どっか行ってたの?」
近寄ってきて一緒に歩く。
「市民図書館で会ったの。ね、ツネトモ」
「うん。マコはどっか行くの?」
「これから絵画教室」

え……絵も習ってるんだ……すご…

「マコって絵上手だよね」
「そんなことないよ。まだまだだよ」
あれでまだまだって言われても。マコは学校で応募する県展はもちろんだが、一般の人たちと競うコンテストでも上位に入賞しているそうだ。クラスの女子が騒いでいた。
「絵も上手いし、賢いし、スポーツできるし……すごいな~マコ……」
「なんだよ、やけに誉めるじゃん」
「ほんとのことでしょ」
「……ど、ども……」
私は、胸はれることってないなぁ。勉強もスポーツもいまいちな私のひがみだ。もともとどんくさいので、動くことも考えることもちょっとのんびり目だ。
「あれ~、そこにいるのは3年か~?」
行こうとする道の逆がわから、坂下と高橋が登場する。
嫌な予感しかしない……。
「取り合うな」
マコがボソリとつぶやき、私とツネトモは同意する。足早にやり過ごそうとするが、彼らはしつこかった。
「おい!無視るなって!」
坂下が前方に回り込んできた。
「なに…これから塾なんだけど」
マコがダルそうに答える。
「おお、真面目なんだな~」
なんで絡んできたのか訳がわからない…。
「坂下、早く行こうぜ」
高橋がチラリと私たちを見て、ばつが悪そうに視線をそらす。
「あ?…ああ」
納得がいってないようだったが、坂下は高橋がいる方へ行った。
去っていくのを確認して、3人はため息をつく。
「ああ、変な緊張感……」
と、マコ。
「なんだろな?高橋が止めなかったらまた突っかかってきたかな?」
と、ツネトモ。
「まあ、でも、そう会わないでしょ?」
と私。
「「……そう?」」
2人は少し不満そうだったけれど、夏休みに学校外で会うことはそうないでしょ。だから、こういうこといちいち気にしてたら持ちませんて。
「あー、私、帰る」
「え、送るよ」
「え、いいよ。私もう元気だって分かったでしょ?」
ツネトモは気を遣いすぎるのよ。
「じゃあね」
2人は真称が帰るのを見送る。

遠ざかっていく真称を見送りながら永朝が言う。
「マコ……」
「あ?」
「坂下ってマホロと接点あるのかな?」
「……なんで」
「あいつ、マホロに用があるみたいだから」
「え……」
「だって、ずっと見てたよ。ぼくたちと目が合わなかっただろ?」
「…………ツネ、時間ある?」
「うん、あるよ」
2人は顔を見合わせて、頷くと、真称のあとを追った。
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