第17話

文字数 1,199文字

「ヒロノ!ハル!」
呼ばれて声のする方を向くと、真称(マホロ)がいた。およっと一歩後ずさりするぐらいの笑顔だ。
「どした?マホ。マコがうっとうしい?」
「まだ大丈夫」
そんな2人を横で見ている春崇(ハルタカ)は、いいコンビだよなー…、と漠然と思っていた。お互いに距離感が同じなんだと思う。ここまでなら入ってきても、いやじゃないよっていう距離感。本人たちはどう感じているのか分からないけれど、見ていて俺はそう感じた。
「あのね、この後ペンギン見に行かない?」

ペンギン…また珍しいチョイスで…

片やクラゲで癒され、片やペンギンで笑顔になり……忙しいな。思わず苦笑する春崇。
「いいね!確か、この近くだったじゃん。行こう!」
「まてまて、こっちは大水槽に行こうって話持ってきたんだけど」
真称の後ろから丈臣(タケオミ)が来た。
「わあ、大水槽!真称!イワシの群れとか見れるかもよ!」

 そこはすぐ採用するんだ……

「え!あのキラキラした感じもあるかな?美味しそうかな?」
「あるんじゃない?美味しそうなんじゃない?!

 おいしそうって……

俺とオミは顔を見合わせた。
「うまそうなのかな?」
「オミー……乗っかるなよー」
「はははは」
館内地図を見ると、どちらも同じ方向にある。大水槽のとこはどうしたって通るな……。
「いいんじゃない?大水槽からのペンギンで」
「じゃあ、そうしよう。おーい!(サカエ)!」
オミが手を振って栄たちの方へ呼び掛けた。
「じゃあ、マコとツネ様に伝えてくる」
「おう……って…待って真称」
「ん?」
マコとツネ、(タクミ)がこっちに向かって歩いてきてる。
「こっちに来てるよ」
「ほんとだ」
途中から小走りになって合流をする。
「大水槽行って、ペンギンに行こうって話になったんだけど……」
「お?あ、ああ…いいんじゃないか?2つとも近いし」

あ……れ…?

何だか誠斗(マコト)がちょっと変…?
表情が固くなってるような…。
「ハル…」
ツネが声をかけてきた。
「ん?あのさ、紺色のリュック持ってる旅行生いるじゃん」
「うえ?」
回りを見渡してみると…、確かに、俺たちぐらいの小学生集団がいる。その集団はみんな紺色のリュックを持っていた。
「ほんとだ。いるね…」
「うん、さっきね、その一部の集団が真称(マホロ)のこと知ってる風で、見てたんだよ、こっちを」
「なんだそれ……」
「うん、まだわかんない。けど、ユッキーが嫌な感じがしたって」
「ユッキーが……?」
「そ」
ユッキーの感覚は、俺、信用してる。
周囲をパッと確認する。大人が多い中、ましてや修学旅行中に「何か…」は考えづらいけれど、よく何かに巻き込まれてるもんなー、マホロ。
「分かった」
俺はすぐに尋乃を追いかけた。
「大水槽ってどのくらい大きいんだろう?」
「楽しみだね」
尋乃のテンションが高いのはいつものことだが、珍しく真称も楽しそうだ。

 ふむ…

真称に何かあったら当然、尋乃が黙ってない。そうなると、

 俺だって黙ってないよー

春崇の小さな決め事は、外から見ただけでは分からない…。
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