第1話

文字数 1,209文字

1。

学年がひとつ上がり、4ー2のクラスになった。
尋乃(ヒロノ)誠斗(マコト)は4ー1になり、離れてしまった。澄幸(スミユキ)が4ー1で2人と一緒になった。ヒロノと離れたのはちょっと寂しい…。けれど、永朝(ツネトモ)丈臣(タケオミ)と同じクラスになった。つね様とは、3年の夏休みからよく図書館でも会うようになり、すっかり慣れた。(コト)さんにも顔を覚えてもらうほどだ。(サカエ)春崇(ハルタカ)は4ー4だ。
一維(カズイ)は新1年生となり、学校帰りに迎えに行くこともなくなった。カズイもいっちょ前に鍵を持ち、“カギっ子”の仲間入りをした。
6年生になった坂下(サカシタ)高橋(タカハシ)とは、今のところ大きなトラブルはない。夏の出来事以来、私を避けているようだった。今回、高橋は坂下とクラスが違ったようで、一緒にいるところを見るのは朝だけになった。

「おはよう、マホロ!」
歩道橋をわたったところでヒロノに会う。
「おはよう、ヒロノ。今日は遅いんだね」
ヒロノはいつも私より早く学校に着いている。私と同じ時間帯になることは珍しいのだ。
「もう、聞いてよ~。私のお気に入りの消しゴム!妹に取られたの~」
「あら~……」
「もう、朝、突然持っていってさ~はあ?!って感じよ、もうー…」
両手を真上に上げて、まさしく“お手上げ”のポーズだ。
「それで遅くなったの?」
「一応抗議したわけよ。“自分のがあるでしょっ”て。そしたら泣くわけ」
「あら~」
「そんで、私が怒られるわけ。“お姉ちゃんでしょ”って。やってらんないわよ」
「分かる。で、消しゴムどうしたの?」
「しょうがないから(モモ)のを、ああ、妹の名前ね、桃。それを持ってきたわよ……ああもう!腹立つ!」
「ヒロノは偉いな~、ちゃんと譲ってる」
「マホロ~、分かってくれる?」
「うんうん、分かるよ」
ぎゅっと抱きついてくるヒロノ。かわいいな、きっと妹さんも、そんなお姉ちゃんのもの持ってたいんだろうな。
「よっ、おっはー、って……何やってんだよ、キモいな」
「はあ?!キモいって何よ!朝から失礼でしょ!」
坊主に近い短髪の栄が声かけてくる。
「おはよー、サカエ」
「マホロ、ちゃんと言った方がいいぞ、嫌ならはっきり…」
「サーカーエー!」
「わっ、やっば…!」
ヒロノ、私から離れるとサカエの方へ全速力。サカエもヒロノの勢いにヤバイと感じたのか、急いで逃げた。
「待て!サカエ!」
2人ともリレー選抜を走るほど早いから…、あらま、もうだいぶ先の方を走ってる。
「朝からいい勝負だ…」
「ほんとだなー」
聞いたことある声に振り返る。
「マコ、つね様、おはよう~」
「おはよう、マホロ」
相変わらずの爽やか笑顔のつね様。
「おはよー。朝から元気だなー…」
いつもと変わらないマコ。
引っ越して来たときとは比べ物にならない、朝の風景。
「マホロ、今日遊べる?」
ツネトモ、マホロの横に来て言う。
「うん、大丈夫」
「じゃあ、いつものとこで」
「おい、俺も誘えよ、ツネ」
「どーせくるでしょ?」
「雑だな…」
2人のやり取りを聞きながら思わず笑ってしまう。今日も楽しく過ごせそうだ。
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